ba3ji3の植物園3


 ふじ  



フジは、4月下旬から5月上旬に長い穂のような花序を垂れ下げて咲く、観賞価値の高いつる性の花木で、多くの園芸品種があり、現在では世界各地で植えられています。広義にはフジ属(Wisteria)を指しますが、狭義には同属のノダフジ(W.floribunda)を指します。floribundaは「花の多い」の意味です。ノダフジの名は、摂津国野田の藤之宮(現在の大阪市福島区付近)にフジの名所があったことによるといわれています。同属のヤマフジ(W.brachybotrys)と、よく混同されますが、フジ(ノダフジ)のつるは右巻き(上から見て時計回り)であり、ヤマフジは左巻きなので区別がつきます。フジは、根を切断すると乾燥しやすいために、移植など植え替えのときには、「追い掘り」により、ていねいに根の先端の細根まで掘り上げる必要があります。

 

マメ科フジ属に属する「つる性植物」で日本にはフジ(ノダフジ)とヤマフジが分布します。フジは本州・四国・九州に分布し、ヤマフジは本州の近畿以西・四国・九州に分布します。西日本には両方が普通に分布しますが、万葉の頃には両者を区別していなかったようです。両者の区別は意外に簡単で、フジのツルは右巻き、ヤマフジのツルは左巻きです。万葉集ではフジを詠んだ歌は26首あります。サクラの46首と比べても見劣りしない数です。万葉の人々にとって、フジはサクラと並んで春の息吹を感じる花として、なじみの深いものだったのでしょう。フジには現在、多くの園芸品種があり、我々の目を楽しませてくれますが、観賞用として植えられた歴史も古く、万葉集の当時から庭に植えて鑑賞していたようです。

 

また、「色合い深く花ぶさ長く咲きたる藤の松にかかりたる」(枕草子)、「松に藤の咲きかかる」(源氏物語)、「松にかかる藤波」(平家物語)というように、松との組み合わせがフジの美しさを引き立てるとされていたようです。フジはまた、そのしなやかさを利用して、繊維として利用されてきました。フジが繊維として利用されていたという記述は古事記にも見られます。樹皮をむき、灰汁で煮たものを裂いて、糸にしていたようです。その糸で織った衣は大変丈夫で、ノイバラの藪に入っても破れず、また水にも強いので江戸時代まで仕事着として用いられていました。また、藤衣は平安時代の貴族の間では喪服として利用されました。このように、衣類としては粗末なもの、忌むべきものとされてきました。

 

一方で、フジは二面的な意味を持つ植物であり、花が垂れ下がった稲穂を連想させることから豊作を予兆する木として、非常に神聖なものと考えられていました。またフジの花は神を招く依代であったともいわれています。神職であった中臣氏が、大化の改新後に藤原氏と名乗るのもフジの神聖性にちなむものであったようです。フジは文様や意匠として古くから用いられています。例えば京の三大祭りの1つである葵祭の牛車の飾りはフジですし、小袖の文様や陶器、蒔絵など様々な場所に用いられています。また、家紋としても藤のつく名字の家紋として、良く用いられています。例えば加藤性には下り藤・丸に下り藤・上り藤が多く、佐藤性には下り藤や丸に下り藤の家紋が良く用いられています

 

万葉集ではフジは、単に藤とするよりも藤波として表現しているものが、フジを詠んだ26首のうち18首と圧倒的な数に及びます。春風のもと、ゆらゆらと揺れるフジを波になぞらえたものであるが、この句もそのうちの一種であり、藤波と掛けて藤の映る海を詠んだ所におもしろみを感じます。ところで、フジは木からぶら下がっている、いわゆる下り藤が普通ですが、上り藤と言えば何でしょう?答えはルピナスです。花茎がすっと立った姿は確かに上り藤そのものです。藤の花言葉は「歓迎」「恋に酔う」「忠実な」「優しさ」「決して離れない」です。女性のやさしさや穏やかさなどを象徴とすることから、女性らしい花言葉が多くあります。

 

花言葉に怖い意味はないものの、「恋に酔う」「決して離れない」など、恋愛を連想させる花言葉が一人歩きしたことで、怖いと感じる人も少なくありません。藤は紫色の花をつける品種と白の花を付ける品種があります。紫の藤には「君の愛に酔う」、白い藤には「可憐」「懐かしい思い出」といった花言葉があります。紫の藤の花言葉は花の香りに由来しており、白の藤は紫の藤に比べて純粋無垢なイメージがあることから、幼い頃の姿を連想させるといった特徴が由来と言われています。藤の花は甘い香りが漂います。そこまで強くはないものの、穏やかな風によって周囲がふんわりと香り、初夏の訪れを感じられます。花の見た目は蝶に似ていて、ひらひらと舞う景色ははっとする美しさです。藤の葉は複葉で、日当たりの良い場所で見ると光沢感があります。

 

藤の花が高貴な花と呼ばれる理由は奈良時代がルーツです。平安時代に勢力のあった藤原氏の一族の中では、藤の名にちなんで家紋にしていた家もありました。藤紋には上がり藤と下がり藤がありますが、勢力や運気が低下しないよう、上がり藤が生まれたといった説もあります。藤原一族の名と共に高貴なイメージが今もなお定着したと言えるでしょう。シロバナフジはその名の通り、白い花が特徴的で、花房は20~30cmほど、花序は1mと大きく育つ特徴があります。日本では山陰地方に多く自生しているので、散歩やハイキングなどで見かけることも多いです。開花時期は3~5月でゴールデンウィークには見頃を迎えることから、藤棚に仕立て、観光客を楽しませる名所がたくさんあります。

 

ヤエフジは一般的な藤と違い、丸みを帯びた花びらが特徴的な品種です。名前の通り八重咲きの品種であることから「八重黒竜」といった別名もあります。日本で楽しめる場所は栃木県のあしかがパーク周辺とごくわずかな地域のみとされ、足利パークのヤエフジは特に紫が濃いといった特徴があります。ノダナガフジは、一般的な藤に比べて花序が1〜2mと極めて長く育つ特徴を持った品種です。別名を「九尺藤」とも呼び、大きく育つことが由来とされています。藤棚に仕立てればカーテンのようにエレガントさを放つことから、格式の高い庭先に植えられることも多いです。開花時期は4~5月下旬で、藤棚やトンネルを観光地とする場所では5月上旬〜下旬が見頃です。



アケボノフジは翼弁の先に口紅を塗ったような花色が特徴的な品種です。女性らしい花の美しさがあるので、ガーデニングや鉢花としても人気があります。桃色のつぼみから白い花が咲くため、可憐な花を庭先に植えたい方におすすめです。開花時期は4月下旬~5月上旬と非常に短いので、観光地で楽しみたい方は時期に注意しましょう。アカバナフジは薄い紫の花が特徴的な品種です。つぼみは濃いピンクであるのに対し、花が開くにつれて徐々に赤に変化します。そのため、「桃色藤」といった別名もあります。愛らしい印象が強いので、藤棚を見たときはつい足を止めて見入る人も少なくありません。開花時期は4〜5月であり、入学・卒業式シーズンでも桜と合わせて楽しめます。

 

藤の香りには幸運をもたらすといった言い伝えがあることから、魔除けの効果があるとされています。また、「不死」と読むこともできるために、縁起が良いと言われることもあります。しかし「不治の病」を連想させるなどネガティブなイメージもあることから、病気の人への贈り物には不向きです。また、花が垂れ差がる、ツルが絡みつくといった特徴もあるため、雨樋や壁など住宅を傷つけてしまう可能性や、根が張ることで管理しにくくなるといった物理的な影響も受けやすいので、植樹を検討中の方は定期的な剪定が必要であることを視野に入れましょう。藤はマメ科植物であることから、花に「レクチン」といった毒性が含まれています。大量に摂取してしまうと、吐き気や嘔吐、めまい、下痢などの中毒症状を引き起こす可能性があるため、食用として楽しむときは十分に加熱しましょう。

 

また、樹皮や雌しべの部分には「ウイスタリン」、種にはアルカロイドの一種である「シスチン」も含まれています。贈り物として藤を選ぶときは、直接手で触れないことを一言添えてから贈ると良いでしょう。藤は藤棚としてやトンネルとして楽しめますが、鉢植えや盆栽として飾ってもおしゃれなインテリアになります。毒には注意する必要がありますが、小さい子どもやペットがいるご家庭では、高い場所に置くほか、むやみに触らないよう配慮することで問題なく育てることができますよ。藤の花は古くから日本に伝わる花であり、今では世界各地でも楽しめる花にまで広がりつつあります。花言葉も恋愛にまつわるものが多く、恋心を伝えるにはぴったりの花と言えるでしょう。

紫陽花



アジサイはアジサイ科アジサイ属の落葉低木の総称です。学名を「Hydrangea macrophylla」、英名を「Hydrangea」と言い、ギリシア語の「水」と「容器」が語源ですが、広義の原産地は日本です。和名の「紫陽花(アジサイ)」は、“藍色が集まったもの”という意味の「集真藍(あづさあい/あづさい)」が転じたものと言われています。花の色がよく変わることから、「七変化」「八仙花」などの別名で呼ばれることもあります。アジサイは樹高が1~2mほどの低木で、鉢花は4月頃、切り花は4~7月にかけて出回りますが、本来の開花期は6~7月です。本州から四国・九州にかけて分布していた原種である「ガクアジサイ」が西洋に伝わり、品種改良された「セイヨウアジサイ(ハイドランジア)」として再び日本に持ち込まれました。現在でも品種改良は盛んで、日本のガクアジサイは約10種、東アジアと北米の西洋アジサイには約40種もの種類があります。

 

多彩な花色に加えて、額(がく)咲き、手まり咲きによる咲き方の違いも魅力。また花を楽しめる期間に加えて樹齢そのものも長く、時間が経つほどに見事な枝ぶりとなるため、園芸品種として世界中で高い人気を誇ります。アジサイの花は、「両性花」と呼ばれる部分と「装飾花」と言われる部分の2種類から構成されています。一般的に私たちが「アジサイの花」だと認識しているのは「装飾花」で、機能的には萼(ガク)にあたります。その中央にある「両性花」には雄しべと雌しべがあり、いわゆる「花」の機能を備えていますが、サイズが大変小さくほとんど目立ちません。またアジサイの花のもうひとつの特徴として、土の酸度が要因となって花(装飾花)の色が変化することが挙げられます。土がアルカリ性だと赤色に、酸性だと青色になるというのを聞いたことがある方も多いでしょう。この性質を利用し土の酸度を調整することで、鉢花のアジサイでさまざまな色が作られています。ただしこの変化の度合いは種によって差があり、すべてのアジサイに当てはまる性質とまでは言えません。

 

アジサイの咲き方には、「ガク咲き」と「手まり咲き」の2種類があります。両性花が密集した周りを装飾花が縁取るように華やかに咲くのがガク咲き。装飾花が手まりのように半球形に咲くのが手まり咲きです(内側に両性花がつく場合もあり)。アジサイの葉は先端に行くほど尖っていく楕円形で、光沢があるものが多いです。秋から冬にかけて落葉します。ガクアジサイ(額咲き)は、日本各地で古くから自生していた野生種のアジサイで、今日では園芸品種としても流通しています。多くの種類を持つアジサイの原種でもあり、つぼみのような粒々とした両性花の周囲を装飾花が取り囲み、額縁のようになっていることから、この名前で呼ばれるようになりました。幕末に医師・博物学者であるシーボルトによって海外にも紹介され、品種改良が盛んになった経緯があります。西洋アジサイより小ぶりですが、丈夫で初心者にも育てやすいのが特長。他の品種よりも乾燥に強いため、日向にあたる場所でも育てることができます。

 

アジサイ/ホンアジサイ(手まり咲き)は、いわゆる「アジサイ」としてもっとも一般的な品種です。ガクアジサイを改良した結果、両性花だった部分がほぼ無くなって装飾花だけになり、手まりのように丸く固まって咲きます。ガクアジサイなど他の品種と区別するため、「ホンアジサイ」と呼ばれることもあります。ヤマアジサイは、主に関東以西の山地に古くから自生している野生種のアジサイで、別名「サワアジサイ」。ガクアジサイやアジサイよりも枝が細く、丸く小ぶりな花と光沢のない小さめの葉が繊細な印象を与えますが、満開になると華やかさもあり人気があります。日本原産の種であることから日本の気候によくなじんで耐寒性・耐暑性も高く、直射日光さえ避ければ置き場所もあまり選びません。鉢植えで小さく育てることもできて育てやすい品種ですが、葉に毒性があるためお子さんやペットのいるご家庭では注意が必要です。カシワバアジサイは、カシワバアジサイは、その名の由来となった柏の葉に似た大きな葉と、通常の半球形ではなくピラミッド形に咲く花が特徴です。

 

隙間なくみっしりとした咲きぶりで、咲き始めは緑がかった色から白へと変化し、一重咲きと八重咲きがあります。葉が大きいので、花だけでなく秋の紅葉も見ごたえがあります。大きく成長する品種なので、鉢植えよりも地植えがおすすめ。また半日陰~日向を好み、光量が足りないと花付きが悪くなるため、充分なスペースが確保できるようにしましょう。秋色アジサイは、アジサイの「秋色」とは厳密には品種名ではなく、もともと初夏に咲いた通常のアジサイの花が気温の変化などの要因によって、次第にアンティークカラーと呼ばれるくすんだ色合いに変化したものを指します。近年ではより美しい秋色が出せるよう、品種改良したものも存在します。その色合いからレトロで優しげな雰囲気があり、ドライフラワーにしてインテリアとして飾りたい方にも人気がありますハイドランジア(西洋アジサイ)は、日本原産のアジサイがヨーロッパやアメリカに持ち込まれ、品種改良されたものをハイドランジア(西洋アジサイ)と呼びます。日本に逆輸入された後も品種改良が続けられ、日本の固有種と区別するためこの名前で呼ばれるようになりました。

 

花色が豊富で豪華な手まり咲きとなるため、贈答用など鉢花として流通しているアジサイの多くがハイドランジアとなっています。外国種アジサイは、主に北アメリカを原産とする改良種のアジサイを指し、特にアメリカアジサイ(アメリカノリノキ)の「アナベル」が有名です。装飾花の数が多く、手まり状になった花は直径30cmほどにも達します。純白もしくはピンクの花色で、ボリュームがあって見栄えがするので、庭木として近年人気の高い品種です。育てやすく、また他の品種と違って前年の夏からではなく冬越しした春に花芽を付けて同年の夏に開花するため、冬でも剪定ができてガーデニングで管理しやすい種でもあります。ノリウツギは、円錐型に花を付けるアジサイの仲間で、別名「ピラミッドアジサイ」とも呼ばれます。アジサイのなかでは高木で、樹高が5mほどに達することも。開花時期も通常のアジサイより少し遅く、7月頃から開花が始まるため、花が少ない夏場でも楽しむことができます。他の品種と異なり、その年に新しく伸びた枝に花を付ける「新枝咲き」のアジサイのため、秋まで剪定することなく楽しめます。

 

園芸用のアジサイは、落葉が終わった秋から春にかけて植え付けを行います。特に落葉が終わった11~12月初旬か、寒さがひと段落した2月下旬~3月がおすすめです。5~7月の開花時期を迎えたあとはよく肥料を与えて剪定を行い、冬期に改めて追肥を行ってください。アジサイは主に4月頃から、開花した状態の鉢で店頭に出回ります。このような開花鉢のなかから花色や咲き方、品種などが気に入ったものを購入して植え替え、育てていくのが一般的な方法です。苗を選ぶ際は、葉にツヤがあってグリーンの色合いが綺麗なものを選びましょう。またアジサイは咲き始めから咲き終わりにかけて色の変化があるお花であるため、既に開花している鉢で花色を確認してから購入することをおすすめします。特に「秋色アジサイ」として売られているものは、販売時点で既に色合いが変化している場合が多いので、翌年の咲き始めは異なる色になる可能性があります。アジサイは基本的に丈夫であまり土を選ばない植物ですが、水はけと水持ちのよい土を好みます。特に鉢植えは水はけと水持ちに注意し、自分で土を作る場合は、赤玉土の小粒7に対して腐葉土3などの比率でブレンドしてください。

 

またアジサイの花色は、酸性に傾いた土だと青色に、アルカリ性ならピンクに変わります。先に書いたとおりすべての品種がそうなるわけではありませんが、用土や肥料の配合を変えて好みの花色になるようコントロールしてみてもよいでしょう。アジサイは日光を好む植物です。花付きを良くするためには、適度に日が当たる場所で育てる必要があります。夏場の直射日光を避け、日当たりと風通しの良い場所で管理してください。特に地植えの場合、半日以上は日光が当たる場所を選ぶようにしましょう。寒さには比較的強いですが、アジサイは乾燥に弱い植物でもあります。冬場は寒風にさらされない場所を選び、鉢植えの場合は置き場所を移動させましょう。寒冷地で地植えにする場合は、寒冷紗や防風ネットを掛けることも検討してみてください。水をたくさん必要とするアジサイ。夏場は水切れを起こさないようにすることが夏越しのコツです。猛暑日には朝に水をやったあとでも、土の乾燥具合を見て夕方にも水を与えてください。いずれもたっぷりと与えることが必要です。

 

土のなかの水が熱せられて根などを傷めないよう、夏場の水やりは気温が高い日中を避けるようにします。またアジサイは秋になると落葉するため、冬場は枯れたような外見に見えます。ただし水は必要としていますので、鉢植えの場合は冬場も水やりを忘れないようにしましょう。地植えの場合、特に注意すべき冬越しの作業はありませんが、植えている場所の環境によっては様子を見て寒冷紗をかけてください。アジサイの水やりは、鉢植えと地植えによって適した方法がやや異なります。鉢植えのアジサイの場合は、春から秋にかけては、土の表面が乾いた段階で、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えます。アジサイの枯死は水切れや乾燥が原因となることが多いので、注意が必要です。アジサイに限らず、水やりは植物が光合成を行って水分を必要とする朝に行いますが、夏の暑い時期は土の様子をチェックし、乾燥しているようなら気温が下がってきた夕方にも水やりをしてください。地植えのアジサイの場合は、地植え直後のアジサイには水やりが必要ですが、根付いたあとは特に水やりの必要はありません。

 

ただし雨の降らない日が数日間以上続くようなときは、土の様子を見て適宜水を与えましょう。冬場のアジサイの場合は、ほとんどすべての葉が落ちて枯れ木のような見た目になっていますが、地中の根は生きているので水やりが必要です。夏場ほどの回数は必要ありませんが、土の表面を見て、乾いていたらたっぷりと水やりしてください。アジサイの肥料は、主に休眠期となる冬場と開花が終わったあとに施します。冬に与える肥料(寒肥)は、春にしっかり必要な生長を行って美しい花を咲かせるためのもの。12月下旬~2月中旬までに行ってください。根の広がっている範囲の土に数ヶ所穴を掘り、発酵油かすを素材とした固形肥料、もしくはアジサイ専用の肥料などを埋めるとよいでしょう。花後の肥料は、新芽を育てるための肥料で、花が終わってから1ヶ月ほど経った際に、冬場と同量の肥料を与えます。鉢植えのアジサイの場合は、上記の冬と花後の肥料に加えて、10日に1度程度、液肥を与えてもOKです。

 

地植えのアジサイの場合は、冬と花後の肥料に関しても、与えなくても例年花が咲いているようであれば、特に対応しなくて問題ありません。アジサイの苗を購入すると、最初は小さなビニールポットに入っているか、より大きく豪華に見せるため適正サイズよりも小さめの鉢に植わっているケースがあります。そのような場合、既に鉢いっぱいに根が張りめぐらされ窮屈な状態になっていることがあるので、アジサイを購入したらまず植え替えを行うことをおすすめします。また鉢植えのアジサイは、根が張りすぎると根詰まり(鉢の中で生長した根同士がぶつかって適切に育たなくなること)を起こすため、定期的に大きな鉢に植え替えをする必要があります。アジサイは成長が早いので、植え替えは1年に1回ほどを目安に、花が終わる7月か、または休眠期の11月~2月に行うとよいでしょう。アジサイを植え替える際は、今まで使用していた鉢より一回り以上大きい鉢を用意してください。まず、新しい鉢の中に鉢底石を敷き、用土を入れます。根鉢(根と周りの土)を崩さないように注意しながら、アジサイを今までの鉢から新しい鉢に入れ替えます。

 

次に、隙間がなくなるよう、しっかりと土を入れてください。隙間があると、水やりにより根が崩れてしまい、枯れる原因になります。使用済みの割りばしなどで土を突いて、押しながら土を入れると上手に仕上がります。植え替えをする際は、土の表面が乾かないように直射日光を避けて作業してください。地植えとして新たにアジサイを植え付ける場合、葉が落ちる冬期に行います。アジサイは地植えすると樹高も横幅も大きくなるため、なるべく広いスペースを選んでください。アジサイは剪定しないと花が咲かないというわけではありませんが、剪定をしないとどんどん樹高が高くなってせっかく咲いたお花が見えづらくなってしまうので、適切な時期に行うことをおすすめします。その際、1点注意が必要です。樹木の花の付き方には「新枝咲き」と「旧枝咲き」という2種類があります。新枝咲きはその年に新しく伸びた枝に花芽(これから花になる芽)がつくタイプ、旧枝先は前年に伸びた枝に花芽がつくタイプです。アジサイの場合、新枝咲きの品種もありますが、ほとんどが旧枝咲きとなり2年越しで花を咲かせることになります。



つまりアジサイは花が咲いていない枝も多いため、うっかり花芽まで切ってしまったという事故が起こりやすいのです。剪定をする際は、これから花が咲く枝まで切ってしまわないようにしてください。剪定は、開花が終わった7月から9月までに行いましょう。アジサイは花びらを落として散るということがないので、変色して萎れてきたら思い切って花を取ってしまった方が、株全体に栄養が行き渡るようになります。終わった花から2節下の脇芽(茎の葉の付け根=節から出る芽、これから葉になる)が出ている上でカットし、花が咲いていない枝は残してください。残した脇芽が茎として成長し、秋を過ぎるとその下の節の付け根から新たな脇芽が出ていきます。11月~3月のあいだに再度、花芽より上の部分を剪定すると良いですが、花芽がわからないようなら行わなくても支障ありません。このとき、枯れた枝などがあればカットしましょう。大きくなりすぎてしまった株を小さくしたい場合、花が終わった後に地面から30~50cmほどの高さでバッサリと刈り込んでしまう「強剪定」という方法もあります。ただし、これを行うと翌年に花が咲かなくなるので注意してください。

 

アジサイは以下の病気や害虫に注意してください。うどんこ病は、植物の葉などが、粉をまぶしたように白くなる病気です。特に5~6月と9〜10月に発生しやすく、初期段階ではポツポツと白く粉を吹いているように見えますが、悪化してくると葉全体から茎までが真っ白になります。予防するには風通しの良い場所で育て、葉が密集しないように置き場所や植える場所を調整。根元に生える雑草はこまめに取り除いてください。灰色かび病は、ボトリチス病とも呼ばれ、カビが原因で花びらに褐色の斑点ができたり、茎や葉に灰色のカビが生える病気で、ボトリチス病とも呼ばれます。4~11月にかけてが主な発生時期ですが、梅雨時期に高湿度になると頻度が上がります。また20度前後の室内では冬場でも発生するので注意してください。予防には日当たり・風通し・水はけを良くして過剰に肥料を与えないように注意。また植え替えのたびに土を新しくしましょう。ハダニは気温が高く乾燥している場所に発生する害虫で、観葉植物全般によく見られ、葉から栄養を吸って弱らせます。ハダニを放置してしまい繁殖して被害が大きくなると、弱った葉から光合成ができなくなり、生長不良や枯死に至ります。予防には霧吹きでこまめに葉へ水を掛け、葉水を行うようにするとよいでしょう。

 

鉢の場合、定期的に洗面台などに水を溜め、10~15分ほど鉢ごと水中に浸け置くのも有効です。鉢植えのアジサイは、「密閉挿し」という方法で挿し木を行いましょう。鉢、剪定バサミ(または切れるカッターナイフ)、挿し木用土、ビニール袋、細い棒(竹串)を準備してください。可能な場合は、発根促進剤を用意しましょう。まず、アジサイの挿し穂を作ります。挿し穂は花が付いていない枝の穂先から、約15~20cm(2節目)の部分を切り落とすことにより作ることができます。増やしたい分の挿し穂を作りましょう。上手に枝を切るためには、剪定バサミや、切れ味の良いハサミまたはナイフが便利です。アジサイの枝の中には水分・栄養分を運ぶ管が通っているため、管を潰さないよう慎重に切ってください。作った挿し穂は、水分が蒸散しないように余分な葉を取り落とします。葉の上部は取り除いて、「水揚げ」作業に入ります。水揚げとは、挿し穂の切り口を水に浸けて吸わせることです。1時間以上、水に浸してください。水揚げの際は、発根促進剤を数滴加えた水に浸けることにより、発育を促進することができます。

 

次に、鉢に用土を入れ、水を多めにかけて湿らせます。続いて、竹串などの細い棒を使用して差し穂の枝を挿す穴を空け、挿し穂を斜めに差し込んでください。挿した穂の周囲の土が枝に密着するように軽く手で押さえ、上からビニール袋を被せて密閉状態にします。そのまま1ヶ月程度直射日光の当たらない日陰に置き、用土を乾燥させないよう注意してください。最後に「鉢上げ」を行います。成長した苗は、挿し木ほど一般的ではありませんが、アジサイを株分けで増やすこともできます。適した時期はアジサイの休眠期となる11~3月で、なるべく温かくなってから行いましょう。増えた株を植える場所の準備です。鉢植えの場合は、新しい鉢に用土を入れます。地植えにする場合は苗のサイズに合わせて穴を掘り、穴の3割ほどが埋まるまで腐葉土を入れて、底の土と混ぜ合わせます。根を傷めないように掘り出した株を鉢から抜き、地植えの場合は根を掘り上げてください。取り出した株の根鉢(根と土が一体になった部分のこと)を崩し、傷んだ根があれば切り取ります。

 

剪定バサミやナイフを使って、どちらにも根がついた状態で2分割になるよう切り分けます。地植えで株が大きな場合はノコギリを使ってもいいでしょう。切り分けた株を、準備しておいた新しい鉢もしくは場所に植え付けます。植え付けが終わったらたっぷりと水やりをしてください。地植えのアジサイであれば、枝を地面に誘引して土をかけ、枝の一部から発根させる「取り木」という方法も可能です。適した時期は4~9月のあいだですが、梅雨時の6月がもっとも安定して行えます。木の下の方についた長く伸びて曲げやすい枝を選び、脇芽のある節の部分が地面に付くように枝を折り曲げます。次に髪の毛に使用するUピンやU字型に曲げた針金・クリップなどを使って、折り曲げた枝が土から浮かないように挿して固定します。このとき、節のすぐ下を針金で縛ると根が出やすくなります。脇芽のある部分に土をかけて上から軽く押さえます。2~4週間程度で発根しますが、半年くらい様子を見て、充分に根が伸びたら親株から切り離しましょう。発根するまでは土が乾燥しないようにこまめに水をやり、被せている土が流れて少なくならないよう注意してください。

梅  

ウメは中国原産の花木で、朝鮮半島を経由して日本に渡ってきたといわれています。正確な渡来時期はまだわかっていませんが、『万葉集』では100首を超える歌が詠まれていることから、奈良時代にはすでに栽培されていたようです。観賞価値の高い花を咲かせる「花ウメ」と薬や食品加工用に向く良質の実をつける「実ウメ」に分けられ、目的の違いにより剪定方法や肥培管理など栽培方法が異なります。花ウメの観賞対象は花のほかに香りや、幹の形や枝ぶりです。寿命の長い樹木なので、年月をかけて樹形をつくるのも楽しみの一つです。「花ウメ」にも非常に多くの品種があり、研究者によりいくつかの分類法があります。



なかでも、明治時代に書かれた『梅譜』の著者である小川安村が、木の性質や花の特徴などから「性」というグループに分けたものを基本として、それぞれの「性」を野梅系、緋梅系、豊後系の3つの系統に振り分けた分類法が知られています。花言葉のひとつである「忠実」は、平安時代の貴族で学問の神様として有名な菅原道真の「飛梅伝説」が由来です。 平安時代、菅原道真は当時大きな影響力を誇っていた藤原氏との権力争いに破れ、大宰府(福岡県)に左遷されてしまいます。京都を離れることになった菅原道真は、日頃から愛していた庭の桜や松、梅の木との別れを惜しみ、次のような歌を詠みました。

 

「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」 現代語に訳すと、「梅の花よ、春風が吹いたら香りを大宰府にまで届けておくれ。私がいないからといって、咲く春を忘れてはいけないよ」という意味の歌です。 この時、主人との別れを受けて桜は悲しみのあまりに枯れてしまいます。松の木と梅の木は主人のいる大宰府を目指すものの、松は途中で力尽き、大宰府にたどり着いたのは梅だけでした。この伝説が「忠実」という花言葉の由来とされています。 この伝説の舞台で、菅原道真を祀っている福岡県の太宰府天満宮には、樹齢1,000年を超えるとされる「飛梅」がご神木として現存しています。

 

境内のどの梅よりも先に開花して、参拝者を楽しませているそうです。 「高潔」や「忍耐」の花言葉は、梅の開花時期が由来です。品種や地域にもよりますが、梅の花が開花する時期は1月下旬で、本格的な春が訪れる前のことです。 冬の厳しい寒さが残る時期に花を咲かせる姿は、高潔や忍耐という言葉が相応しいといえるでしょう。 紅い花を咲かせる紅梅の花言葉は、「優美」や「艶やか」です。上品な美しさや艶やかな香りを持った花を咲かせることが由来でつけられました。 また、『枕草子』で知られる平安時代の作家・歌人の清少納言が愛した花であることも由来といわれています。 実際に、枕草子では「木の花は こきもうすきも 紅梅(木の花は色が濃くても薄くても紅梅が良い)」と詠っていることからも、清少納言が紅梅を愛していたことがわかります。

 

白い花を咲かせる白梅の花言葉は、「気品」や「上品」です。艶やかな紅梅とは異なり、白梅は奥ゆかしく気品のある美しい花を咲かせます。その清楚な雰囲気が由来とされています。 また、梅の中にはピンク色に近い花を咲かせる品種もあります。淡い色で柔らかさや清々しさを感じるピンク色の梅の花言葉は「清らかさ」です。 いずれの花言葉も梅の花の雰囲気を表しているのが特徴です。 「梅の花言葉にはネガティブな意味がある」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。ご紹介してきたように、実際には梅の花言葉にはネガティブな意味はなく、ポジティブな言葉ばかりです。 梅の花言葉にネガティブな意味があるといわれるのは、梅の花の開花時期が人や物事との別れが多い春先の時期に重なるため、そのようなイメージが持たれたと考えられます。

 

3つのものの等級を表すときに使われる言葉が「松竹梅」です。高い順に松・竹・梅となります。古代中国では、冬を耐えて葉を保つ松と竹、寒い時期に花を咲かせる梅を「歳寒三友」と呼びました。 歳寒三友は清廉や潔白、節操を表現するための絵のテーマとして用いられていましたが、日本で庶民の間に広がっていく中で、めでたいものの総称として使われるようになったそうです。「梅干しは三毒を絶つ」は、梅干しを食べると体のさまざまな不調の改善が期待できる、という意味のことわざです。日本に現存する最古の医学書『医心方』にも記載されています。

 

「梅はその日の難のがれ」は、朝出かける前に梅干しを食べるとその日は災難を免れることができる、という意味のことわざです。 昔は、旅人がその土地の熱病や風土病にかからないように、梅干しを薬として携帯していたのが由来です。ホテルや旅館などで梅干しが出されるのは、この説が伝えられているからとされています。 他にも、「梅干しと友達は古いほど良い」や「桜切る馬鹿、​梅​きらぬ馬鹿」、「梅と桜を両手に持つ」など、梅に由来することわざはいくつもあります。どのような言葉が他にあるのか、どんな意味なのかを調べてみてはいかがでしょうか。

 

梅の木は、バラ科・さくら科に分類される落葉高木で木の高さは5〜10mに成長します。品種によって、赤や白、ピンク色の花を咲かせ、やがて果実をつけます。梅の木は、種から育てると目を出して実をつけるまでに5−6年、10年以上かかるとも言われています。また接木をして1−2年ほど経った苗木では3−4年ほどで実をつける木に成長するそうです。家庭で梅の木を育てようと思ったら接木した苗から始めるのがおすすめです。春を告げる花として、古くから親しまれてきた梅の花。開花日は天候によって左右されますが「春の訪れ」というだけあって、1月末から2月上旬に咲き始め、2月中旬ごろには満開を迎えるところが多いようです。品種によって梅の花の色はさまざまで白や赤、ピンク色といった色とりどりの花を咲かせます。花の開花の季節になると、梅まつりとして全国各地でもさまざまな催しが開かれます。

 

梅の花言葉は、「気品」「忠実」「忍耐」「高潔」です。「忠実」という花言葉に関しては、言い伝えがあり、漢学者だった菅原道真が自宅に梅を植えて大切にしており、大宰府に左遷された際にその梅が主を慕い飛んでついて行ったという伝説(飛梅伝説)からきているそうです。梅は花の色によって花言葉が変わり、白梅は「気品」、紅梅は「あでやかさ」という花言葉があるそうです。また梅の種類によっても花言葉は変わってきますので、多様な花言葉が存在します。野梅系は、この系統の代表的な花は野梅性の冬至、と難波性の御所紅、紅筆性の紅筆があります。野梅系には紅梅も白梅もあります。野梅性など白梅の花言葉は「気品」で、難波性や紅筆性など紅梅の花言葉は「優美」です。梅の花の花言葉は怖いと聞く人もいるかと思いますが、そのようなことはないようです。この種類は原種に最も近い梅の品種で、花や葉が小さく、枝も細めであることが特徴としてあげられます。また、香りがとても良いことでも有名です。

 

緋梅系は、この系統の代表的な花は、紅梅性の大盃、緋梅性の緋梅、唐梅性の唐梅です。紅梅性や緋梅性などの赤色に近い紅梅の花言葉は「優美」、唐梅性などのピンク色に近い紅梅の花言葉は「清らかさ」です。この種類は枝や幹の内側が紅色や緋色であることが特徴です。花の色も紅花や緋色がほとんどですが、稀に花の色が白い種類もあります。葉が小さく、香りも良いものが多い種類です。豊後系は、この系統の代表的な花は、桃園、楊貴妃、武蔵野があります。この3種類はピンク色や薄紅色の花であるため、花言葉は「清らかさ」になります。この種類はあんずとの交配により生まれたもので、枝は太く、花や葉は大きいという特徴の豊後性と、枝が細く葉は小さい杏性があります。花の香りは前述の2種類に比べて少ないです。

 

花梅とは、花を観賞するために改良された品種です。花の色や形、木の造形、そして香りを楽しむ梅です。果実がなる品種もありますが、実がつきにくかったり、種が大きかったりし、加工するには難しいものが多いです。その分花は、梅の花には珍しい八重咲の花や、香りもそれぞれ特徴があり、花の色も白や紅・淡いピンク濃いピンクなど様々な種類があります。花梅はよく盆栽として楽しまれる品種でもあります。木を植えるスペースがない方は、盆栽で花梅を楽しんでみてはいかがでしょうか?小さい鉢植えでもいい香りを楽しめますよ!「おもいのまま」は、別名「輪違い」といいます。八重の花が咲きますが、1本の梅の木に赤、白色の花と一つの花が赤白分かれた花をつけるのです。この梅は品種改良の時に、思っていた通りに花が咲かずに、梅の思いのままに何色かに分かれて咲いたのです。花のつき方が珍しい事から盆栽として好まれます。この花の花言葉は「寂しさに耐える」です。開花時期が2月中旬という冬枯れの植物が何もない時期に咲くためこの花言葉がついたとも言われています。



「冬至」は、冬至梅は、野梅性の早咲き品種で白花の花梅の代表格です。花は白の中輪花で一重咲きです。開花時期は12月中旬~2月中旬と早く、冬至のころに咲くのが名前の由来だそうです。正月用の梅として使用されており、枝が細く、鉢植えや盆栽に向きます。この梅花の花言葉は、白梅と同じく「気品」で、あでやかな紅梅に対して、白梅の凜として上品なその花姿から由来しているようです。鹿児島紅梅は、紅梅性の品種で紅梅の代表格です。花は濃い紅色の中輪花で八重咲きです。開花時期は2月上旬から3月中旬と少し遅咲きの花梅で、細い枝の髄や葉柄も濃紅色となり艶やかな品種で観賞用としておすすめです。切り花として使われることもあるきれいな花梅です。花言葉は「優美」。紅梅は独特の雰囲気を持っており、紅梅が見頃を迎える満開の風景は、艶やかな女性のような色香、上品な美しさから、この花言葉がつけられたそうです。