ba3ji3の植物園

     

薔薇は、バラ科(APG分類:バラ科)バラ属に含まれる植物の総称です。バラ属は北半球の寒帯、亜寒帯、温帯、亜熱帯に天然分布し、200種以上が知られていますが、一般にバラと称しているのは、これらの野生種の雑種および改良種で、美しい花を開き、香りの高い、古くから香料用、薬用に栽培されてきて、さらに中世以後観賞用に改良された園芸種をさしています。日本での栽培は、江戸時代以前は、ごくわずかの日本および中国原産のバラなどが栽培されていたにすぎませんが、江戸末期、明治以後は欧米からいわゆる「西洋バラ」が輸入され、今日のように多彩なバラの品種が観賞、栽培されるようになりました。さらに、かねて湿度の高い日本に適したバラが期待されており、1950年(昭和25)ころから毎年日本で作出した品種も発表されています。



つるバラは、大輪咲き、中輪咲き、小輪咲きがあり、それぞれ一季咲きのものと四季咲き性を帯びるものとがあり、一般にクライミング・ローズとよばれています。日本産のテリハノイバラを改良したものは丈夫で伸長力が強く、20世紀初頭にフランスやアメリカで改良されたものは、枝の垂れやすい小・中輪咲きのものが多いです。これらをランブラー・ローズと云います。ノイバラを改良したものも多花性で伸長力もありますが、葉が美しく照らないものが多く、ランブラー系の美葉には劣ります。現在、大輪咲きをはじめとしたつるバラの他に、木バラから突然変異でつるバラになったものが多くあります。たとえば木バラのピースから出たつるバラはつるピース、木バラのフロリバンダ・ローズであるサラバンドのつるバラはつるサラバンドと呼ばれています。こうした木バラから出た同品種のつるバラは現在数百種に及んでいます。

 

木バラは、18世紀の終わりに、中国から西洋(イギリス、フランス)へ移入された四季咲き性バラのティー・ローズに西洋バラ(ガリカ系、ブルボン系)が交雑されてハイブリッド・ティー・ローズがつくられました。20世紀の初め、フランスで、ローザ・ルテアから出たペルシァンイエローを導入して、鮮黄色、銅黄色、朱黄色、朱銅色などの花色を持つペルネシアナ系がつくられました。しかし、これらのバラは耐寒性が乏しく、北ヨーロッパなどの寒冷地ではよく育たなかったので、デンマークでは、耐寒性のもっとも強い日本のノイバラ系を交雑して小輪四季咲き性房咲きのポリアンサ・ローズを、さらに房咲き中輪半八重のハイブリッド・ポリアンサローズをつくりました。これがフロリバンダ・ローズの前身です。欧米では大半この系統を栽培しています。

 

第二次世界大戦後は更にこれに大輪系.を交雑改良し大輪房咲き四季咲き木バラのグランディフローラ・ローズがつくられました。これはクイーン・エリザベスをはじめとする強健で開花連続性の高い一群です。木バラのもっとも小さいものに、ミニアチュア・ローズとよばれる、樹高約15センチメートルで立派にみえ、花径約2センチメートルの花が房のように咲くごく矮性のものがあります。ほかに、木バラとつるバラの中間にあたるシュラブ・ローズがあり、原種も観賞できるものがこのなかに多く含まれています。また最近は、造園修景用の這性、懸性、大横張り性の品種がつくられ、カラースケープ・ローズ系、メイディランド系、ケイセイ・カラースケープ系、コルデス・パーク・ローズ系などがあります。

 

花にはいくつかの基本形はありますが、開花するにしたがい、形が変化していく事が多いです。花弁が中心に向かって抱えるように咲く抱え咲き、花弁の先がとがったように反曲する剣弁咲き、中心の花弁が高く立つようにみえる高芯咲き、中心が盛り上がって高くみえる盛り上り咲き、開くと平らにみえる平咲き、5~6枚の花弁だけで咲く一重咲きなどがあります。以上のほか、剣弁高芯咲き、剣弁盛り上り咲き、半剣弁盛り上り咲きなどのように組み合わせて形づけられるものもあります。花の大きさは、土質その他の条件によって、同品種でも花の咲き方に大小がありますが、一般に巨大輪咲きは満開状態で径15センチメートル以上のもの、大輪咲きは12センチメートル以上、中輪咲きは7センチメートル以上、小輪咲きは約4センチメートルまで、極小輪咲きは2.5センチメートルまでを云います。

 

品種によって、それぞれ光沢、形、質などが異なります。同一品種でも場所、肥料、土質、水質によってかなり違うことがあります。葉の表面がつるつるして光の反射が照るようにみえるものを照り葉、やや照り葉に近いものを半照り葉、葉の表面に反射の少ないものを艶けし葉、葉の先が丸みを帯びているものを丸葉、葉が細くとがっているようにみえるものを細葉、葉に非常に厚みのあるものを厚葉と云います。苗を植える場所は1日3時間以上日の当たる場所がよく、もし、午前半日日照と午後半日日照のどちらかを選ぶなら、午前半日日照のほうが栽培がやや楽です。大樹の下、「クレオソート」防腐剤を施した材の前、風当りの強い場所などは避けたほうがよいです。通風の全然ない所はよく育ちますが病虫害にかかりやすいので、やや通気のある所がよいでしょう。

 

土壌は粘質土がよいですが、赤土、黒土も悪いことはありません。ひどい乾燥地はよくありませんが、毎朝水を与えるようにすればかえってよい結果が得られます。いつも水のはけない水たまりの場所は、根腐れをおこすので一番よくないですが、植え場所を高い所にすれば可能です。新苗、大苗、鉢仕立て苗などがあります。新苗には、7~9月にかけて畑で芽接ぎして、翌年の4月から売り出されるものと、12~1月に切接ぎをして、その年の4月下旬から売り出されるものとがあります。大苗には、新苗を畑で育てて売り出す一年生大苗と、足掛け2年目の秋に売り出される二年生大苗とがあります。鉢仕立て苗には、新苗を鉢に植えてまる1年育てたもの、二年生大苗を鉢に入れ、春に咲かせて販売するもの、3年生以上の大苗を大鉢に入れて栽培し、開花させて販売するものなどがあります。



新苗は4~5月、二年生大苗は10月下旬から翌年3月まで、鉢仕立て苗はいつでも花壇に下ろしてよいです。植え方は、まず、深さ40センチメートル以上、直径30センチメートルの穴を掘り、約3キログラムの堆肥と約300グラムずつの油かす、過リン酸石灰、骨粉と土をよく混ぜたものを埋め込み、その上に肥料気の少ない土を約10センチメートルかけ、軽く溶成リン肥30グラムを混ぜる。この上にかぶせるように根を置いてすこし土をかけ、水を十分に与えます。水は、初めに掘った穴の底までしみ通るようにすこしずつすこしずつ多量に与え、水が引いてから上土をかけます。以上は新苗も大苗も同じ植え方です。鉢仕立ての苗を植えるとき、休眠期(12月から2月)の場合は根を柔らかくほぐして植え付けますが、休眠期以外の場合は鉢から抜いて、根を崩さずに植えるようにしなければならなりません。

 

植え付け直後は3日くらい水を控えますが、あとは3日おきに水を施します。少なくとも一週に一度は水を与えたほうがよいです。ことに真夏と真冬の乾燥期には、1株に大バケツ1杯の量の水を与える事が肝要です。芽出し時期や開花直前も同様です。四季咲き性のあるバラは開花の度ごとに木が疲れるので、花が済んだあとは必ず追肥が必要です。普通、追肥は、二年生大苗では、根から30センチメートル以上離して、約100グラムの遅効性肥料を輪状に与え、軽く中耕する。高度(濃度)化成肥料はごく少なめに、一度に50グラムずつ与えます。ことに火山灰土の多い地方はリン酸分の土壌吸収が多いので、窒素、リン酸、カリを1、3、1の割合にします。粘質土では1、1.5、0.5の割合くらいが適当ですが、土の保水力、保肥力、日光受射率などもあわせて考える必要があります。

 

春季剪定は発芽直前に行います。結果的には前年の秋、成長した枝の高さの2分の1くらいのところで切る事になりますが、具体的には株の中央から見て、枝の外側にある芽(外芽)の充実したものを選び、その芽の上で、芽の向きに沿ってやや斜めに切ります。株の中央にある込み入った枝はなるべく切り取り、枯れ枝、病枝、細枝、弱枝などは全部切り捨てます。一見して杯状の形に切るのがよいです。単独花として咲かせることを狙わずに、樹形がある程度まとまって咲くように考えながら刈り込みます。強健で大柄な株立ちのものは剪定を行いますが、丈の低い小柄の種類では軽く整枝をするような気持ちで刈り込みます。寒冷地や冷涼地では、四季咲きの場合は夏も続けて咲かせますが、関東以西の暖暑地では8月下旬から9月初旬に、軽く形を整える程度に刈り込みます(整姿)。

 

剪定後は、切り口から病原菌が入らないように、すぐに切り口に薬剤の濃度散布を行います。発芽の際は、害虫がつかないように対虫薬剤を散布します。成熟した葉の上に黒い斑点ができ、それが広がって斑点が黄色くなり、落葉してしまう状態を黒点病(黒斑病)と云います。これには、病原菌が付着して根を下ろす前に予防薬をかけるのが最もよいです。雨などで地上からの跳ね上がりによって伝播されることが多いので、降雨の前に葉の裏を主にして薬剤散布を行う事がこつです。うどんこ病は、湿気の多い春から梅雨期、秋の長雨のころに多く発生します。幼葉、新葉がうどん粉をかけたように白くみえだし、葉がよじれてきます。さび病は、粘質の湿地、排水の悪い所、有機質の多い場所に発生しやすく、葉にきれいな朱銅色の斑点ができて木を傷めます。べと病は低温・多湿の場合に発生します。新葉の表面に紫色を帯びた斑点ができ、やがて落葉して苗は枯死します。

 

それぞれ薬剤を散布して防除する。腐らん病は、2~4月ころ、成熟した枝幹に発生し、初め茶褐色の斑点ができ、しだいに黒ずんだ褐色となります。冬季中の乾燥または寒害による凍傷に起因して、菌が付着して発展するものと考えられます。患部は切り捨て、切り口に防除剤を塗って置きます。木の成熟が不足の場合にも考えられるので、リン酸カリやマグネシウムなどが欠乏しないように努めます。癌腫病は、地際の根や接ぎ口に近い根にこぶができるもので、株は栄養をとられて枯死することがあります。地中の太い根や細い根にもこぶがつくこともあります。地中に病気が発生した場合には、株を抜くばかりでなく、少なくとも50センチメートル立方の植え土を取り替えなければならなりません。モザイク病は、日本ではあまり発生しないですが、葉に鮮やかな白黄色の模様が現れてくるもので、生育および開花に影響があり、切り花用花壇に現れることがあります。

 

アブラムシは新芽に多くつき、繁殖が速く、良花の開花を妨げ、新芽を傷めます。殺虫剤で駆除します。バラクキバチは、4月下旬ころ、茎を裂いて産卵するもので、新梢を枯死させます。殺虫用の粉剤をその時期10日間毎朝まいて、飛来を防ぎます。チュウレンジバチは5月下旬から6月、茎に傷をつけて卵を産みます。孵化した幼虫が葉を食害するので、幼虫はただちに殺虫剤で駆除します。ダニは細かい赤褐色をした害虫で、葉の裏にクモの巣のような膜を張り、その中に寄生して、葉からの養分を吸収し、落葉枯死させます。葉裏を水洗してから殺ダニ剤を散布するほうが効果的です。そのほかコガネムシは捕殺し、またゾウムシは粉剤を散布し、駆除します。

 

バラ花壇は、1本1本に十分な太陽光線を必要とするので、株間隔は0.7~1メートルにすべきです。また乾燥を嫌うので真冬や真夏はマルチング(敷き藁)を行います。平地より10センチメートルくらい低くして、雨のあと湿りがちにして置きます。土は膨軟を保つために、乾燥牛糞などを鋤き込みます。バラを2列に植える場合は、交互にすると、個体差の激しい樹形を補うことができます。広い芝生などでは、強健な大株を単独に植え、日本庭園ならば、石を利用して一重咲きや淡色のごく矮性品種を植えるのもよいでしょう。スタンダード仕立ては、ノイバラ台木を1本仕立てとして、高さ1~2メートルの間に芽接ぎをするものをいい、バラ花壇よりやや上部のほうで、ぱっと花束が咲くようになります。なお、つるバラを芽接ぎして、懸崖のように垂らして咲かせるものをウィーピング・スタンダードと云います。

 

つるバラはいろいろな仕立て方があります。アーチは幅1.2メートル、高さ2.3メートル程度がよく、刺の少ない品種がよく用いられます。ネットフェンスは垣根のかわりに用いるので、四季咲きの品種がよく用いられます。スクリーンは、鉄製の格子形の構造物で、それにつるバラを絡ませ、花の屏風を立てたようにするのを目的とするもので、よく伸びる品種が適しています。パーゴラは棚にバラを絡ませて屋根がわりにするものです。ポールは元来、丸太につるバラを絡ませ、花の柱とするのが目的でしたが、最近は鉄製の3本支柱をまとめたものになりつつあります。鉄製ポールの輪の直径を1.5メートルほどに広げれば、何種類ものつるバラを植え、立体感を大きくすることができます。これには四季咲き性のものがよく用いられています。



トンネルは、やや広い庭園に使われるもので、高さ2.5メートル、幅2.3メートル、長さ3~5メートルのトンネルをつくり、それにバラを絡ませるものである。品種はなんでもよいですが、刺の少ない品種を加えたほうがよいです。バラの切り花には、花は大輪咲き、中小輪房咲きなどがありますが、多花性であることが条件です。品種にはソニア、マリナ、パサデナ、アールスメール・ゴールド、カルト・ブランシュ、スプレー咲きにはミミなどがあります。バラの香りは、ダマスクローズの濃厚さ、ティーローズのさわやかさ、センティフォーリアの華やかさの3系統に大別されます。精油としてゲラニオール、シトロネロール、フェニール、メロールなどが多く含まれ、合成香油でも天然のバラ精油を加えなければ高級な香料とはなりません。南フランスではグラースを中心とした地方にローズ・ド・メを、ブルガリアやトルコではダマスクローズを、それぞれ香料用として栽培輸出しています。

 

接木による実生や挿木も可能ですが、ノイバラの台木に接木をしないとよく育ちません。接木には切接ぎと芽接ぎがあります。切接ぎは枝茎の休眠期、12月下旬から2月初旬にかけて行います。ノイバラの台木に目的品種の接穂を接ぐもので、接床温度を10℃から徐々に15℃に上げて、乾燥しないように湿度を70~80%に保ちますが、発芽後は多湿にしすぎないように注意します。芽接ぎは7月から9月までの間に、ノイバラの台木の茎に目的品種の芽を挿入して育成するものを云います。



追肥は速効性の化学肥料を用い,春の芽出し後から月に1~2回の割合で行いますが,蕾が着色したら一時施肥を控えます。冬季12~2月にかけ,木の周囲に深さ30cmくらいの穴を掘り,植付時と同様の堆肥および有機質肥料を十分に施します。これは翌年の元肥となります。咲き終わった花は,種子の着生を防ぎ次の花をよく咲かせるために,本葉を2~3枚着けて切り取ります。梅雨あけ後の高温で木が衰弱するため,7月中旬以後は開花させず摘蕾し,木の衰弱を防ぐ。根もとから出る太い茎はシュート(苗条)と呼ばれ,次年度以後の主幹となるので,この先につぼみが見えたときにその枝の2/3から1/2を残して切り取ります。8月下旬から9月上旬にかけて,秋の整枝を行います。秋の整枝は細枝,枯枝などを取り除き,その年に伸びた枝の1/3~1/4ほどを切り込みます。10月下旬前後が満開となるよう,逆算して整枝の時期を決めます。この時期は品種により多少異なりますが,整枝後約50~60日くらいかかるので,遅咲きのものは早めに整枝を行い開花時期がそろうようにします。

ゆり   



百合(ユリ)はユリ科の球根植物で、花期は5月~8月です。白やピンク、黄色などの香りの強い大ぶりの花を咲かせます。百合の花名は、茎が細く花が大きいので、風が吹くと花が揺れるところから「揺すり」と言われ、それが変化して「百合(ユリ)」と呼ばれるようになりました。漢字の「百合」は、百合の花の鱗片がたくさん重なっているところかきていると言われています。ユリは、北半球の亜熱帯から亜寒帯に約100種が知られています。地下に鱗茎(球根)があります。日本や中国には観賞価値の高いユリが多く、古くから欧米の注目を浴びてきました。東日本に多いヤマユリは、花の大きさ、芳香共に王者の風格があります。西日本に多いササユリは、花は小型ですが可憐で優しいです。他にもカノコユリやヒメサユリがあります。

 

ヤマユリは、山に咲くユリです。直径20~26cmもある白い大きな花が咲きます。世界のユリのなかで、最も大きな花をつけ、ユリの王様と云われています。花には、強い香りがあります。地下に大福もちのような形の鱗茎があります。鱗茎は、茎のまわりにふくらんだ鱗片が集まった、球根の一種で、大きなものは、直径10cmくらいあります。茎は鱗茎から1本直立し、葉は長さ15~20cm、幅2.5~5cmで、先がと尖っています。花は茎の先に1~6個つきますが、多いものでは、20個もつく事があります。花は先がそり返った6枚の花被片からできています。そのうち3枚は少し細く、もともとのがく片が花びらのような姿に変わったものです。幅の広い3枚の花被片はもともとの花びらです。がく片と花びらの姿がよく似て区別がつかなくなったような場合、両者を区別しないで、花被と呼びます。雄しべは6本、雌しべは1本です。ヤマユリの花被片の内側には、赤褐色の斑点がたくさんあり、中央部は黄色です。果実は、ソーセージ形で、長さ5cmくらいの、平べったい卵形の長さ6~8mmくらいの種子がたくさん入っています。

 

コナラのような落葉樹の多い雑木林、草の生えた明るい林のふち、日の当たる山の斜面などに生えます。花が大きく、とくに目立つので、すぐに分かります。まわりの草を刈りとり手入れをすると、よくふえて、ヤマユリのお花畑ができます。本州の近畿地方から北の特産種です。九州と北海道では、はじめ植えられたものが野生化しています。また、近畿地方では、古くから栽培されたので、見つけても本当の自生かどうか疑問の点があります。めずらしい植物ではないですが、乱獲によって減少する心配があるので、注意したいです。花がきれいなので、切り花にしたり、庭に植えたりします。花の大きい性質を生かすため、園芸品種の重要な交配の親でもあります。花被片に赤いすじが入る園芸品種のクリムソン・クイーンは外国でつくられました。種子をまくと4~5年で、花をつけます。

 

鱗茎はユリ根といって、食用になります。春か秋に掘りとって、鱗片を1枚ずつほぐし、日本酒を少し入れて煮ます。そして、あんかけにします。少しもったりした歯ざわりと、ほろ苦い味がよいです。学校の理科の教材や研究にも利用されています。根の先の細胞は、大きくて、染料でよく染まるので、細胞分裂の観察材料となります。つぼみのなかの雄しべでは、花粉ができるときの特別な細胞分裂(減数分裂)が観察されます。ユリの名前の由来は、はっきりしませんが、より合った花が咲くようすから来た、とか、大きな花が風でゆり動くようすから来た、という説があります。「百合」と書いてユリと読みます。ユリの中国名は百合であるのですが、中国語では、「バイヘ」と発音しますから、ユリにつながる音はありません。日中合作ということらしいです。



野生のヤマユリの花の変わりものにいろいろな名前があります。花被片の真んなかに太い赤色があるものは紅筋、ほとんど斑点がなく、純白の花を白黄、花被片の斑点が黄色のものを白星と云います。変種のサクユリは、伊豆半島や八丈島に生え、花が一層大きく、直径が30cmにもなります。まさに王様中の王様です。日本に野生する別種には、ピンクの花をつけるササユリやヒメサユリ、オレンジ赤のヒメユリ、クルマユリ、オニユリ、コオニユリ、スカシユリなどがあります。クルマユリは高山に生え、スカシユリは海岸に生えます。オニユリとコオニユリは人里の草地にふつうに生え、ヒメユリは山のなかでめずらしいです。白い花のテッポウユリは沖縄県の特産です。ピンクの花で斑点があり、花被片がそり返るカノコユリは四国・九州の産で、広く植えられています。外国産のなかまには、台湾産で花が白いタカサゴユリがあります。園芸植物として交配された品種にはさまざまなものがあります。白い花の新テッポウユリ、赤や白の花で香りのよいパーク・マニーなどがあります。

 

オレンジリリーは ヨーロッパ中南部の山岳地帯原産で、ユリ科ユリ属の多年草の球根植物です。ヨーロッパアルプスの麓から標高1900m以下の亜高山の草地や岩場に自生しています。燃える橙色の花色の百合という意味から’Fire Lily’ とも呼ばれます。雌雄同株です。5月~7月に直立した茎の葉腋から喇叭型の濃橙色の花を6~7個咲かせます。属名のLiliumはユリ属の、種小名の’'bulliferum’は「球根を持つ」で茎にある二次球根を意味します。このオレンジ・リリーを、ある特定の百合と受け取るか、あるいはオレンジ色の百合の総称として考えるのか。頭を悩ます問題です。花の色はオレンジ、咲いている時期は八月と、島の夏のやや終わりがけ、花は日光を満たすように上向きに咲いています。上向きに花を付け梅雨の頃に咲く日本のスカシユリに良く似ています。

 

スカシユリの近縁種であり、北海道の海岸草地や山地の岩場などに生える多年草です。ユリは横向きに咲くものが多いですが、エゾスカシユリは上向きに咲きます。草丈は30~60センチぐらい。花色は主に橙色で、鮮やかな花びらの内側に濃橙色のそばかすのような斑点があります。花びらの付け根が細くなって隙間があり、その隙間からオシベが見えます、つまり透かして見えるので、この名が付いています。エゾスカシユリは軽い砂質の土地を好むようで、道内ではオホーツクの砂丘や草原に多くみられます。江戸時代初期から、北海道に分布するエゾスカシユリなどの交配によって、日本独特のスカシユリが作られてきました。エゾスカシユリの水やりは、地植えの場合、球根を植えた直後にたっぷり与えれば、よほど日照りが続かない限り必要ありません。

 

オニユリは、東アジアを原産とする多年生草本で、古い時代にわが国に持ち込まれて野生化したと考えられます。ユリは世界中で栽培されていますが、食用にしているのは中国、朝鮮半島および日本のみといわれています。食用になる地下部の 鱗茎リンケイは、卵球形で黄白色、やや苦味があり、茎は暗紫色を呈しています。葉は 皮針形で、その 葉腋に黒紫色で豆粒大の 珠芽(ムカゴ)を着生します。7~8月には橙赤色で赤紫色の斑点のある花をつけ、その花被片は皮針形で大きく反り返ります。ユリ属植物は2倍体が基本ですが、本種は3倍体で種子ができないことから、繁殖させるには 鱗片葉あるいはムカゴによって増殖するしか方法がありません。和名のオニ(鬼)は、基準より大きい、あるいは派手など特別であることを指しているといわれています。

 

白百合にもっとも近いイメージのユリはテッポウユリではないでしょうか。白百合は聖母マリア(マドンナ)の象徴とされていますが、実はテッポウユリではありません。テッポウユリはきれいなユリなのに、鉄砲百合とはなんとも無粋な名前です。花弁の筒が長いことが火縄銃のような鉄砲を連想させたからでしょう。わかりやすい名前ですが、もう少し花の美しさを表現したような名前が付けられなかったのでしょうか。中国では麝香百合と呼ぶようで、香りの強さから付けた名前でしょう。テッポウユリよりもずっと良いです。

 

中国四川省にはリーガルリリー(Lilium regale)という耐病性の強いユリがあり、交配の親として重要視されています。花の姿や性質は種によってまちまちでひと言では説明できませんが、野生種は花姿で4系統に、園芸品種は元となった野生種の違いで8系統に分けられます。基本的に秋に球根を植え付けると初夏~夏に花を咲かせます。花壇や庭植えの他、鉢植えや切り花に利用されます。野生種は美しさの中にも風情がありますし、園芸品種は野生種にはない花色やゴージャスさ、かわいらしさがあり、楽しみ方の多い植物です。

 

日本でも球根が広く流通して親しまれているのは、スカシユリとも呼ばれるアジアティック・ハイブリット、カサブランカを代表とするオリエンタル・ハイブリッド、テッポウユリやそれらが元となったロンギフローラム・ハイブリッドなどです(詳しくは分類(園芸品種)を参考にしてください)。基本は6枚の花びらをもちます。正確に言うと外側の3枚はがくが色づいたもので「外花被(がいかひ)」、内側の3枚が本来の花びらで「内花被(ないかひ)」と呼びます。開花した状態では花びらは同じに見えますが、つぼみの状態から観察すると、外花被が内花被を包んでいたことがよくわかります。花の形は大きく開くもの、下向きに咲き花びらが反り返ってまあるくなるもの、筒状で先端が少し開くもの、上向きでカップ状に咲くものなどいろいろあります。



花の中心から1本の雌しべと6本の雄しべを伸ばします。雄しべは長く伸びた花糸とその先端にぶら下がるように付く葯(やく)からなり、葯は花粉を出します。花粉赤褐色~黄色、油分が多くてチョウの羽のように水をはじくものにもしっかりくっつきます。また、服などにつくと落ちにくいです。むかご葉っぱは細長い笹のような形をしたものが多いです。長さは3cmくらいから20cmまでと種によって違います。1本の茎に付く葉の数も少ないもので10数枚、多いものでは200枚以上付きます。葉っぱと茎の基部にむかごと呼ばれる球根のようなものが付きます。むかごはぽろりと地面に落ちて根を生やして新たな株になります。むかごはできない種もあります。

 

やや肉厚のりん片が重なり合って1つの球根を形成します。りん片の1枚1枚は葉が栄養や水分を蓄えられるように変化したものです。球根の大きさは種によって大きさや色、形は様々です。球根は外皮をもたずに裸の状態で強い乾燥は苦手です。球根の下から「下根」、球根から伸びた茎に「上根」と呼ばれる役割の異なる2種類の根を付けます。下根は株を固定させ、上根は水や栄養を吸収します。下根は伸縮する力があり、伸びて縮む時に球根を引っ張って地中を移動する役目もあり、牽引根や収縮根とも呼ばれます。茎が地面を横に伸びて地下茎になる種もあります。上根の付け根には木子と呼ばれる小さな球根を付けます。中には上根を出さない種もあります。

 

カノコユリ(鹿子百合)亜属(マルタゴン系)花は花弁が強く反転して球状の花形となって下向きに開き、斑点が多いです。これに属するものとしてはカノコユリ、オニユリ、コオニユリ、タケシマユリ、クルマユリ、キカノコユリ、マルタゴン種などがあります。球根は形態上は鱗茎で、茎の変化した部分に、葉が変化して肥厚した鱗片葉を形成します。チューリップのように球皮がない無皮球根で、乾きやすく、鱗片葉もはがれやすいので、取扱いには注意を要します。貯蔵養分としてはデンプン粒を多く含有し、苦味のないヤマユリなどは食用になります。色は白っぽいものが多いですが、黄色や褐紫色のものもあります。形は種類や生育段階によって異なり、球形から砲弾形のものまであります。大きさは、小球性のもので径約2センチメートル、重さ4~5グラム、大球性のものでは径20センチメートル以上、約1キログラムになります。

 

鱗片葉はヤマユリのように舟底形のものから、クルマユリのように米粒状になるものもあります。根は上根と下根に分かれ、下根は下方への牽引作用があって、おもに球根の安定を保ち、2~3年は生きます。上根には発芽後の養水分の吸収と、茎の安定作用があり、1年で枯死します。草丈は、ヒメエゾスカシユリの約10センチメートルのものから、サクユリの約2メートルのものまであります。茎は円形で分枝せず、直立しますが、帯化した場合には扁平になって多くの花をつけ、ヤマユリでは150個以上開くこともあります。葉は披針形で、日本、中国原産のものにはササやヤナギの葉に似たものが多く、北アメリカ原産のものにはヤツデに似た輪生葉になるものが多いです。

 

普通、緑色葉ですが、濃淡に差があり、まれに美しい斑の入るものもあります。また葉数の多少、光沢、細毛の有無などの差異があります。花は総状花序に頂生し、普通は一重咲きですが、二重咲き、八重咲きになるものもあります。着花方位は上、横、下と種類によって異なります。花形は筒状、杯状、球状と変化に富み、大きさはオトメユリの3~4センチメートルの可憐なものから、サクユリの30センチメートルに達する雄大なものまであります。花被片は6枚、3枚の広い内花被片と、萼片が変化した狭い3枚の外花被片があります。内花被片の内側には蜜腺があり、種類により、乳状突起と斑点があるものもあります。雄しべは6本で、先端に大きな葯がT字形につく。雌しべは1本で、自家受精を避けるため柱頭部は長く突き出し、受粉しやすいように大きくて粘りがあります。

 

開花期はオトメユリ、イトハユリなどの寒冷地型のものは早く、東京周辺で5月、カノコユリ、スゲユリなどの暖地型では8月と遅いです。花色は青、黒紫色系を除いてほとんどの色があり、白、桃、赤色のフラボンやアントシアン系色素のものには香りがあり、黄、橙色のカロチノイド系色素のものには香りがありません。寒冷地から温暖な所まで、さまざまな気候の下に分布しています。低温期は休眠して寒さを避け、暖かな季節にのみ生育、開花します。このため、ほとんどの品種の掘り上げ、植え替えは、地上部の生育が終わる10月から11月で、このころが定植の適期です。定植時期が遅れると発根します。

 

また保存状態が悪いと球根が乾燥して消耗し、ウイルス病が多発するので、かならず適期に植えるようにします。保・排水がよく耕土の深い腐植質に富んだ、やや粘質土壌の所が適地です。テッポウユリ、スカシユリ、リーガルリリーなど陽光・通風を好む種類は、一日中よく日の当たる所に植えます。ヤマユリ、ササユリ、オトメユリ、タケシマユリなど半陰地を好むものは、強い光と西日が当たって地温が上がる所を嫌うので、明るい植え込みの間の西日の避けられる所に植えると、長年にわたって開花します。植え込みは、深さが球根の3倍、間隔は3~4倍とします。鉢植えの場合は腐葉土、完熟堆肥を4~5割入れた保・排水のよい培養土を使う。品種別に鉢を選び、大柄になるオリエンタル・ハイブリッドのジャーニース・エンド、サマードレスなどで6、7号鉢に1球植え、テッポウユリ、カノコユリ、ハカタユリなど、やや大きくなるもので5、6号鉢に1球植えがよいです。スカシユリは1球植えでは寂しいので、3~4球を5、6号鉢でつくると豪華になります。

 

肥料を与えるといっそうよい生育をするので、オリエンタル・ハイブリッド類の地植えで、成分等量の化成肥料を1球につき3~5グラムの割合で与えます。上根が吸収しやすいように、球根の上部に一握りの完熟堆肥を施し、地表に敷き藁をすれば理想的です。中形種は、施肥量を2~3割減らし、小形の原種類は、強い化学肥料をあまり与えないほうが安全です。鉢植えでは6号鉢の場合、肥効の長続きする「マグアンプ」2~3グラムを球根の上部に6割、下部に4割施し、上根が十分肥料を吸収できるようにするとよく生育します。いちばん多く発生するのはウイルス病で、葉に濃淡のモザイク模様やよじれを生じ、一度感染すると回復不能となります。これはアブラムシによって伝染するので、展葉後は「ランネート」などの殺虫剤を定期的に散布して防除します。

 

梅雨のころから葉枯病が発生するので、「ロブラール」などの殺菌剤を散布します。害虫ではアブラムシのほかにネダニが付着するので、45℃の温湯に30分間、浸漬消毒すると効果的であす分球、木子、珠芽などによって自然に殖やすことができますが、積極的に殖やす場合は、実生と鱗片挿しがよいです。ほかに組織培養(メリクロン)や茎伏せによる増殖法もあります。実生は生育が速く、播種後1~2年以内に開花します。発芽の適温は25℃前後です。取播きをすると、2週間で発芽します。鱗片挿しは自然増殖の30倍以上の速さで殖やすことが可能です。挿し期は開花後ある程度球根の充実した8、9月が適期で、掘り上げた球根を消毒し、鱗片葉の外層から中層へかけて肉厚のものをはぎ取ります。保・排水のよい清潔な挿床に、先端約1センチメートルを出して斜めに挿し、約23℃に保って乾かさないように管理すると、3週間後、切り口に米粒大の子球が発生します。これを上手に育てると、翌年は70~80%開花し、秋には直径5~6センチメートルの球根ができます。

 

オニユリ、コオニユリ、ヤマユリの球根を秋から冬に掘り、百合根と称して食用とします。百合根の生の成分は水分67%、糖質が27.2%と多く、タンパク質は3.7%含まれます。無機質についてはリンが100グラム中70ミリグラムで、野菜類のなかでは多く、カリウムも多いが、カルシウムがわずか10ミリグラムで非常に少ないのが特色である。ビタミン類は少ないです。ブドウ糖1とマンノース2からなるグルコマンナンを主とする粘質物が含まれます。煮ると甘味がありますが、苦味と渋味もあります。料理に際しては、まず一度ゆでてあくを除いてから調理するとよいです。また少量の酒を加えるとタンニンが不溶化するので渋味も除くことができます。組織が柔らかいので、強火にしすぎると煮くずれます。そこでみょうばんを少し加えるとペクチンが不溶化するので煮くずれが防げます。含め煮や茶碗蒸しの種にして、かすかなほろ苦さと甘味を賞味します。煮くずれしたものは裏漉しして、きんとんや茶巾絞りにするとよいです。



古代のギリシア、フェニキア、エジプトでは油とユリの花から香油をつくり、皮膚病などの治療に使いました。古代ローマでもそれは受け継がれ、また、花は花輪にされました。クレタ島のミノア文明では、宮殿などの壁画にマドンナリリーが描かれています。『旧約聖書』の谷のユリや『新約聖書』の山上の垂訓のユリはヘブル語shushanなどの訳ですが、前者はヒヤシンス、後者はアネモネとする見解があります。ユリはキリスト教では純潔や処女のシンボルとされますが、これは、レオナルド・ダ・ビンチをはじめルネサンスの画家たちやマニエリスムの画家グレコが、題材にした聖母マリアの受胎告知の場面で、天使ガブリエルにマドンナリリーを持たせたことの影響があります。中国でのユリは薬として扱われ、すでに『神農本草経』に滋養強壮の働きが載っています。