派手な花が特徴のイタチハギは、日本全国に分布している樹木です。戦後に多く植えられましたが、要注意外来生物に指定されてから植えることは推奨されておらず、地域によっては駆除の対象になっています。もともと砂防や緑化に利用するため国外から輸入されたイタチハギですが、在来種の生育を阻害したり、イタチハギマメゾウムシという外来生物の侵入のきっかけになったりと問題視されています。要注意外来生物は特定外来生物と違って、法律による規制はありません。落葉低木であり、木の高さは5mより大きくならず、冬は落葉します。直立する力が弱く、垂れ下がってくるので定期的な剪定が必要です。濃いむらさき色の花びらに黄色いおしべが目立つ派手な花です。花言葉は「前向きな恋」で、5月~7月が開花時期です。イタチハギの葉の1番の特徴は、葉の裏に腺点があることです。腺点とは、粒状の粘液や蜜を分泌する器官です。花が咲いていれば見分けることは簡単ですが、葉だけの状態だとニセアカシアに似ています。見分け方は、枝に鋭いトゲがあるかないかをみることです。トゲがなければイタチハギです。イタチハギは悪条件の生育環境でも問題なく育つことができるため、法面の緑化に使われてきました。また、マメ科であるイタチハギは植えておくと土の状態を改善してくれるため、積極的に植えられていました。
オウシュウマンネングサは、ヨーロッパ原産の多年草で、主にヨーロッパ、アジア、北アフリカに分布しています。乾燥した石灰岩地帯や岩場、道端などに生息しており、非常に丈夫で、乾燥にも強いため、庭園や公園などでもよく栽培されています。オウシュウマンネングサは、別名「キバナノオウシュウマンネングサ」とも呼ばれ、高さは5〜15cm程度で、茎は地を這っています。葉は肉厚で、楕円形から卵形であり、長さは1〜2cm程度です。また、葉の縁には鋸歯があります。オウシュウマンネングサは、黄色い星形の花を咲かせ、直径は約5mm程度です。花期は5月から8月で、花序は円錐形をしており、先端には多数の花が密集して咲きます。オウシュウマンネングサは、日当たりの良い場所に生え、乾燥した環境にも適応し、岩の上や石垣の上にも生えます。また、地表に密生することで、土壌の浸食を防ぐ役割を果たしています。マンネングサ(万年草)の仲間は、ぷっくりと丸みを帯びた葉っぱが特徴的で、多肉植物の一種です。帰化したものも含めて、日本には30種ほどのマンネングサが自生しているといわれています。なかには絶滅危惧種に指定されているものもあるそうです。
フィソステギア(カクトラノオ)とは北アメリカ東北部原産、毎年花を咲かせる多年草です。フィソステギアは約15種の仲間が知られていますが、おもに園芸で栽培されているのは、フィソステギア・バージニアナという種です。繁殖力が旺盛で地下茎を伸ばして増えていきます。地下茎からはたくさんの茎を伸ばしますが、地上を伸びる茎はあまり枝分かれしません。葉っぱは細長い楕円形でフチにぎざぎざが入ります。茎を挟んで左右にでて、一段ごとに90°回転しながら生えるので、よく見るとすごく行儀よく見えます。 茎は断面が四角く、和名のカクトラノオ(角虎の尾)はそこに由来します。「虎の尾」は花穂を虎のしっぽに見立てたものです。ちなみに、属名のフィソステギアはフィサ(袋状)とステゲ(覆い)に由来し、果実を覆うように付く萼にちなむと言われています。夏~秋に花穂を伸ばして白や淡~濃ピンク、青みを帯びた紫色の花を密に咲かせます。花は筒型で横向きに咲き、つぼみは下から上に咲き進んでいき、最期の方は花穂がかなり長くなっています。冬は茎葉が枯れて、根と芽の状態で越します。日本に入ってきたのは明治末~大正時代と言われています。強健な植物で、場所が合えば手間もかからないので公園の花壇などにも利用されます。また、切り花にも向きます。
カモガヤ(鴨茅)は、ヨーロッパ原産の多年草で、オーチャードグラスとも呼ばれています。牧草として広く利用されているほか、のり面緑化やゴルフ場の芝生などにも用いられることもあります。繁殖力・環境適応力ともに強く、各地で野生化して繁茂しています。日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されています。花期は初夏が中心ですが、環境によっては季節に関係なく穂を出すこともあります。開花期の穂は雄しべの葯(花粉が入る袋)が多数ぶら下がり、揺すると煙のように大量の花粉が立ち上ります。イネ科花粉症の原因植物の筆頭に挙げられています。英語では、穂のかたちをニワトリの足に見立ててcock’s
footとも呼ばれます。日本名は英名を訳したものですが、cockを鴨と誤訳したものがそのまま正式名になったと言います。もとは牧草です。今では日本中の草地や道ばた、林のへりなどどこででも見られます。春に花が咲き、やがて種が出来て地上に落ちて芽を出し、冬を越してまた花を咲かせる、とこのような繰り返しをして子孫を残す草を”一年草または越年草”などと呼びます。この花も越年草で、背の高さは60~80cmほどありました。6月に入っても花粉症が治らない人は、もしかするとこのカモガヤ花粉症かも知れません。
カロポゴニウム・カエルレウムはマメ科の蔓性多年草です。蔓長は最大数mとなり、年数を経ると基部は木質化し、湿り気のある土壌に接すると根を張ります。葉は、長さ15㎝程度葉柄の先につく三つ葉で、小葉は6~9cm、幅4~6cmの楕円形~卵形になります。小葉の上面には軟細毛があり、下面はビロード質の軟毛を持っています。開花時には葉腋から、長さ50cm程度までの総状花序をだし、鐘形の5裂片の萼と青~紫色の花冠からなる長さ1cm程度の筒状花を多数付けます。花後には、長さ4~8cm程度で、長楕円形~線形の莢果をつけ、内部に径4~5mm程度の球形で表面に光沢のある茶色の種子を持ちます。本種は、アメリカ大陸原種ですが、1940年代に東南アジアに導入されました。
ギシギシはタデ科の多年草です。その特徴的な名前の由来は諸説ありますが、茎をこすり合わせるとギシギシという音がすることから名付けられたのではと言われています。ギシギシは暖かくなるとともにぐんぐん成長し、種類にもよりますが40~120センチほどの背丈になります。5〜8月ごろに花を咲かせ、その後実をつけてたくさんの種を落とします。そのあとは根に栄養分を蓄え、小さな葉をロゼット状(※)に広げた状態で越冬します。姿形が似ている雑草でスイバというものがあります。茎が酸っぱく、子供の頃に道端のスイバの茎をかじった覚えがあります。見た目はギシギシと似ていますが、こちらはギシギシよりも背が低く、葉の付け根が矢じりのように尖っているのが特徴です。ギシギシは繁殖力が旺盛で、畑の害悪雑草として有名です。まずは種子数が多く、1株あたり1万粒もの種を落とすと言われています。また種子寿命もとても長く、20年以上土壌中に埋まっていても地表に出てくるとまた発芽するという報告もあるようです。その年にギシギシのタネがその畑に落ちないようにしていても、昔落ちたタネが、耕すことで地表に上がってくることでまた発芽するということもあるためとても厄介です。またギシギシは地上部分を刈り取っても、根の上部が残っているとまたそこから芽を出してきます。トラクターなどで耕すとその根が畑中に広がり、余計にギシギシが増えてしまうということもあるので要注意です。
クローバーとは、マメ科トリフォリウム(シャジクソウ)属の総称です。日本でクローバーの代表種のように愛されているのは、シロツメクサという種類です。クローバーはヨーロッパ原産で、日本に渡来したのは江戸時代だといわれています。輸入船の荷物の隙間に緩衝材として詰められていたのがきっかけで日本に根付き、広まっていったとのこと。そのため名前も白詰草(シロツメクサ)となりました。クローバーは他のマメ科の植物同様、根に根粒菌を持っているので土壌を肥沃にします。他にも牧草や蜜源として利用されてきました。シロツメクサは、日本中でもっとも多く見られるクローバーです。河原や空地、公園、その他多くの日当たりの良い場所で見かけます。と花茎を立ち上がらせて、ウサギのしっぽのような球状の白い花を咲かせます。葉は通常3枚の小葉がひとつに集まったような形状をしていますが、稀に四葉のクローバーとして人気がある、4枚の葉のものがあります。さらにもっと稀に5枚の葉や6枚の葉もあります。シロツメクサの中には、変種でピンク色の花を咲かせる品種があります。
コバンソウはイネ科コバンソウ属の植物です。草丈は10センチから60センチでもともと鑑賞用として日本に入ってきましたが、雑草としてあちこちに自生するようになりました。乾燥に強く、土壌を選ばないため、強い植物と言えます。最大の特徴は穂で、小判のように見えます。茶色く変色すると見た目が虫のようで、この特徴を知らないでコバンソウを見つけると、虫だと思って驚くこともあります。コバンソウの花期は5月から9月です。円錐花序で花をつけ、垂れ下がります。見た目が俵に似ていることから「タワラムギ」という別名があります。花穂は小さく1センチから3センチほどです。花といっても花弁は退化していて、鱗片が重なり合った見た目をしています。花穂は明るい緑色で、熟すと茶色く変色します。コバンソウは毒は特になく、食べることができます。シリアルにして食べることもできますが、こちらはイネ科の植物なので、アレルギーのある方はご注意ください。コバンソウの花言葉は「お金持ち」、「金満家」、「興奮」、「熱狂」です。小判のような見た目からこのような花言葉になったのでしょう。コバンソウは自然下で自生していても、茶色くなるとパリパリとした質感になります。見た目が個性的なので、ドライフラワーとしても親しまれ、フラワーアレンジメントにも利用されます。
コメツブツメクサ(米粒詰草)は、日当たりのよい乾燥した場所を好む1年草です。草丈は10センチメートルから30センチメートルほどですが、株元から盛んに枝分かれをします。また、多数の株がびっしりと密集するように生える傾向があり、その姿はまるでマットを広げたかのように見えます。春から夏にかけて、黄色い花を次々と咲かせます。花は5個から20個ずつ丸く集まってつき、直径1センチメートル程度の「黄色い花の球」となります。これがまるで米粒のように見えることが名前の由来となっています。そのほか、コゴメツメクサ、キバナツメクサなどの別名もあります。コメツブツメクサの花は、咲き終わると「干からびた残骸」のようになって、いつまで経っても結実しないように見えます。じつはこの仲間の果実には、枯れた花びらに包まれながら成熟していくという特徴があります。そのため、花びらの残骸部分をそっとめくってみると、ちゃんと中に小さな果実が育っているのを確認できます。果実は成熟すると割れて、中から小さなタネがこぼれ落ちます。小さな草ですが、まるでマットを広げたかのようにびっしりと広がる傾向があります。そのため同じような環境を好む在来植物の生育場所を奪ってしまう可能性があります。
「猿も木から落ちる」という諺(ことわざ)がありますが、よりいっそう、猿が木から滑り落ちそうな木があります。その木の名前は「サルスベリ」です。花期は一般的には7~9月なので、夏から秋にかけての花といえます。街路や公園、お寺や神社の庭などに植えられているので、なじみ深い樹木です。サルスベリは、漢字では「猿滑り」「百日紅」「紫薇」などと書きます。「猿滑り」は、樹皮がツルツルしていて、猿ですら滑り落ちてしまいそうな木であるため、「紫薇」は「しび」とも読み、サルスベリの漢名です。では「百日紅」は、どうして「サルスベリ」と読むのでしょうか。一説では、ある悲しい物語が関係しています。「百日紅」という名称は、この木の花がおよそ百日もの間、咲くために付けられたという説もあります。長く咲き続けるために、百日紅と名づけられ、和名では「サルスベリ」と読むのです。花の色は濃淡それぞれの紅や白、淡い紫などですので、そこから「百日紅」「紫薇」と名づけられたことも想像できます。サルスベリの花言葉には「雄弁」「饒舌」「あなたを信じる」などがあります。「あなたを信じる」は上述の悲恋物語が由来です。
春になると満開のサクラが注目されますが、河川敷や土手、道端などに眼を向ければ、とても地味な土筆(ツクシ)が所々に見られます。ツクシはスギナという植物の一部分ですが、残念ながら花はありません。ツクシは早春に芽を出すスギナの胞子茎です。茎は柔らかな円柱状で退化した「はかま」と呼ばれる葉(葉鞘)が節に付いています。薄茶色で丈は10~15cm程度です。おひたしや佃煮などにしてよく食べた思い出のある方も多いと思います。スギナはトクサ科の耐寒性の多年生草本で、ツクシが枯れた後に芽を出します。草丈は30~40cmになり、中空の円柱状で、節で輪生状に多数分岐します。緑色の葉は小さく鱗片状です。スギナは栄養茎として養分の調達を、ツクシは胞子茎として繁殖をそれぞれ分担しています。和名のスギナは草の形がスギに似ているから、杉菜と名がついたという説や、節のところで抜いて継ぐことができたことから、継ぐ菜から転訛したという説があります。本草綱目には、節と節とが互いに接しているので接続草として登場します。薬用としては、5~7月に全草を採取し、水洗いしてから天日で乾燥させます。これを生薬のモンケイ(問荊)といいます。腎臓炎、利尿、肋膜炎、去痰、膀胱炎、回虫駆除などに、モンケイの煎じ液を服用します。また、皮膚疾患や漆かぶれには外用として用いられます。
ススキは、イネ科ススキ属の多年草です。原産地は中国、朝鮮半島、日本、台湾などで、暑さにも寒さにも大変強い性質を持っています。昔から日本の野山に自生してきたこともあって環境に馴染みやすく、放任してもよく育ちます。むしろ元気に育ちすぎて巨大化し、庭のほかの植物との調和が取りづらくならないよう、メンテナンスが必要な植物です。ススキは、一度植え付ければ毎年観賞できる息の長い植物で、コストパフォーマンスに優れています。ライフサイクルは次の通りです。春から新芽が吹き始め、多数の茎葉を伸ばします。9〜10月に長さ15cm前後の穂を展開。穂が出始めた頃は光を受けると銀色に輝いて美しく、さらに秋が深まるとふわふわとした綿毛をつけた種が風に乗って飛んでいきます。冬になると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り取ってもかまいません。しかし、茶色くなった葉が霜や雪をまとう姿に風情があるとして、残して楽しむ人もいるようです。冬に地上部が枯れても地下の根は生きていて、また生育期の春を迎えたら新芽を出す……という繰り返しです。ススキは、平地や山野に昔から自生してきた植物で、グラス類にも分類されています。グラス類とは、イネ科やカヤツリグサ科の細長い葉をもつ植物のこと。地際から葉を放射状に長く伸ばし、風にサラサラと揺れる姿の美しさから、オーナメンタルグラスとも呼ばれています。
スズメノカタビラは、道ばたや人家の周囲、空き地、畑地などの至るところに生育します。スズメノテッポウとともに春の畑地の代表的な強害草であり、繁殖力が盛んで、一面に群落をつくることがあります。根は浅いですが、株になるので除去が難しい雑草です。茎は平たく、根もとで多く分かれて株になり、葉は細い線形で柔らかく、少し光沢があり、先は急にとがっています。2月頃から夏まで茎の先に淡緑色で卵形の花をつけます。暖地の日当たりのよい場所では、冬の間でも花が咲くので、よく目立つ草です。秋に発芽し、越冬して翌春にかけて生育する一年生冬雑草。主に秋から春に発生し、生育とともに分げつが進み、株を形成して越冬します。その後、春から初夏3月~6月にかけて開花して、結実後は一年生の草種であるため株は枯死します。 また、条件が整えば、春以降でも次々に発生が見られるとともに、小さな個体でも開花します。暖地では極寒気を除いてほぼ一年中花が見られます。スズメノカタビラは世界に500種ほどを含むイチゴツナギ属の一年生イネ科植物で、イチゴツナギ属植物の花序の枝梗は、逆向きの細かな小刺針によってざらついており、子供がその枝梗にヘビイチゴを串刺しにして遊んだことが属名苺繋ぎの語源とされています。種小名のスズメノカタビラは、小さなものを表す接頭語のスズメノに裏地のない単衣の衣を意味するカタビラを併せたものであり、半透明の頴外縁を着物の襟に見立ててます。
セイヨウタンポポには、受粉・受精をしなくても実ができる性質があります。こんな生殖のしかたは、卵細胞と精細胞が融合しないで果実をつくるので無融合生殖と呼ばれています。つまり、果実をつくるのに雄しべはいらないということです。20数種もある日本のタンポポのなかで、もっともたくさん生えているのはセイヨウタンポポです。都会地や人里の荒地や土手、田畑のあぜなどにごくふつうに見られます。明治時代のなかごろ、野菜としてヨーロッパから移入され、北海道で栽培されましたが、その後畑から逃げ出して次第に全国に広がり、日本有数の帰化植物となりました。1904(明治37)年、すでに植物分類学者の牧野富太郎博士は「札幌ニ在テハ欧品大イニ路傍ニ繁殖セリト聞ケリ」(札幌ではヨーロッパからの植物が道ばたにたくさん生えているという意味)と書いています。ヨーロッパではサラダ用にいくつもの品種が栽培されていますが、日本では食材が豊かになった今日、栽培されることはなく、他の自生のタンポポとともに趣味として食べられる程度になりました。ちょっと苦みのある味がします。太いゴボウ根はかわかして粉にすれば、コーヒーのかわりに使えるし、果実は煎じて飲めば利尿の効果があると云います。帰化植物は、それまであった植物の群落がこわされたところに侵入し、増えていきます。だから、見方によれば環境の変質の判断の目安として役に立っています。国内全体に広く分布するセイヨウタンポポは、環境診断には都合がよく、そのため環境庁の「身近な生きもの調査」をはじめ、東京・大阪・富山など各地でセイヨウタンポポの分布調査が行われています。
タンポポはごく身近な花ですが、どのような種類があり、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。「タンポポはキク科タンポポ属の植物で、原産地はヨーロッパです。多年草で日当たりのよい野原や田んぼの畔や草地に生えます。タンポポの種類は、大きく在来種と外来種に分けられます。在来種はエゾタンポポ、カントウタンポポ、カンサイタンポポなど22種類あります。種子は比較的少な目ですが大きく、風に乗って飛ばされると地上に落下しても秋までは発芽しない性質を持っています。夏場は自らの葉を枯らして根だけを残した休眠状態(夏眠)になり、秋に再び葉を広げて越冬します。日本の自然環境に合わせた生活サイクルを身につけているといえるでしょう。外来種はいろいろありますが、海外から入ってきた黄色いタンポポはすべてセイヨウタンポポと総称されています。個体と花粉を交雑(こうざつ)しなくても種子をつくることができるため、繁殖力が極めて強いのが特徴です。また種子が小さく発芽するときの芽も小さいので、他の植物が生えないような都市化された環境でも生育でき、豊かな自然環境が残るところでは生息が難しいといわれています」二ホンタンポポとセイヨウタンポポは、どこを見れば見分けられるのでしょうか。「最大の違いは、花のつけ根にある総苞片(そうほうへん)の形です。セイヨウタンポポは総苞片の外片が下に反り返っていますが、二ホンタンポポは上向きで内片に付いています」
チャイブはネギの仲間で、中空の細長い葉にマイルドなネギの風味があり、和洋中いずれの料理にも利用できる便利なハーブです。特に卵やジャガイモ料理と相性がよいことで知られ、カロテンの豊富な緑黄色野菜として、西洋料理でよく使われています。例えば、ヴィシソワーズというジャガイモの冷製ポタージュには、刻んだチャイブが欠かせません。また、フランス料理では、フィーヌ・ゼルブと呼ばれるハーブのブレンドに、パセリ、フレンチタラゴン、チャービルとともに加えられ、繊細な香りが春夏の料理に洗練された風味を加えます。フィーヌ・ゼルブは、家庭でもオムレツやマヨネーズなどに混ぜて手軽に使えます。花茎の先端に球状に集まって咲くピンク色の小花も、サラダの仕上げに散らすと彩りと香りを添えることができます。成長が旺盛で、春から秋の生育期間中に茎を4~5cm残して収穫すると、2週間ほどで再生します。繰り返し収穫し続けると開花しないので、葉を収穫する株と花を収穫する株は別にするとよいでしょう。直径3cmほどのポンポンのようなかわいらしい花は、花壇の縁取りにも向いています。日本原産で古くから薬味として利用されているアサツキは、チャイブの変種とされています。アサツキは夏に休眠しますが、チャイブは冬を除いて夏の間も収穫できます。
ナツユキカズラは、つる性で、初夏から秋まで長期間、白い花をまるで雪のように株いっぱいに咲かせます。花の咲き方にクセというかムラがあるようで、季節や年によっては一斉に咲かずパラパラと咲き続けたりします。葉は厚みが薄い緩いハート型、幹はちょっとした場所でも巻きつきますが吸着性はありません。丈夫ですぐ大きくなり短期間の緑化にも向いていますが、その分維持管理が難しいです。日当たりと水はけのよい場所に植えます。写真のように株いっぱいに咲かせるには全日の日当たりが欲しいです。とても丈夫で上記の条件以外にはこだわらずよく育ちます。むしろ誘引や剪定などの管理が大変です。基本的に落葉期に剪定しますが、それだけでは足りないので気になったときにいつでも剪定します。花芽がある初夏はなるべく刈り込まないほうがいいでしょう。伸びすぎたらその年の花つきは犠牲にして、冬に一気に切り戻して更新します。洋風や自然風の庭に合います。つる性の性質を生かして、建物やフェンスなどに絡ませるとよいでしょう。小さなトレリスや樹木などに絡ませると収拾がつかなくなるのですすめません。とても丈夫で広がるのも早いですが、それが扱いにくさにつながっています。管理できる腕と時間の持てる人向けの花です。
ネジバナはその名前が表すとおりに、花がらせん状に捩じれながら付いているのが大きな特徴です。この花の巻き方は実は一定ではなく、花によって個体差があり右巻きのものもあれば左巻きのものもあります。中にはねじれ方が途中で変わっているもの、捩じれていないものもあるのです。個性的な咲き方も、更に個体差があって面白いです。日当たりの良い少し湿った場所を好み、草丈の低い植物の多い野原などに自生しています。芝生の中から他の雑草と一緒に生えているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか?雑草と呼ばれることが多いですが、花を見ると一つ一つのお花はしっかりランの形をしていて綺麗です。またネジバナの葉は季節によって形が変わるのも特徴です。夏葉と冬葉というものがあり、夏葉が細長く上に伸びる形をしているのに対し、冬葉は地面にくっつくように放射状に広がり短く丸い形をしています。どちらかの葉が出ている時にはもう一つの葉は枯れてしまいますが、このサイクルのおかげでネジバナは一年中地上部が枯れることがありません。ネジバナには「思慕」という花言葉があります。「思慕」とは思い慕うこと、恋しく思うこと、という意味です。この花言葉がついた由来は万葉集といわれています。「芝付の 御宇良崎なる 根都古草 逢ひ見ずあらば 吾恋ひめやも」の根都古草(ねつこぐさ)がネジバナと言われているのです。この歌の意味はまさに「思慕」といったように恋に心が痛む様子が詠われています。
ネムノキはマメ科の落葉高木です。夜になると葉が合わさって閉じて(就眠運動という)、眠るように見えることから「眠りの木」、転じて「ネムノキ」と呼ばれるようになったとされています。漢字名は「合歓木」と表記します。これは、中国では男女が一緒に眠ることで、夫婦円満の象徴としてネムノキが親しまれていることが由来といわれています。ネムノキは初夏のころに花を咲かせます。ハケを広げたような形で、その先端がピンク色に染まったかわいらしい花です。マメ科の植物なので、実は豆のようなさやの中に入っています。冬になってもさやは開くことなく、全体が風に吹かれて遠くまで飛ばされるようになっています。そういえば、朝霧アリーナ北側駐車場の道路挟んで北側にも大きなネムノキがあるので、その実が風に飛ばされてセンター内にきても、何の不思議もありません。 そして、ネムノキは万葉の時代から歌人たちに愛されてきました。万葉集から二首紹介します。紀女郎(きのいらつめ)が、大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌です。
ノコギリソウは、キク科ノコギリソウ属の草花です。日本や中国、朝鮮半島、ロシア、北アメリカが原産地となっており、世界で100種類ほどの品種があります。長く伸びた茎の先端に小さな花が集まって咲く花で、切り花や花壇などで育てるガーデニングでも人気の高い花です。ノコギリソウの名前の通り葉がのこぎりの刃のようにギザギザしているのが特徴です。耐寒性にも耐暑性にも強く、草丈は5cmから120cmにも及びます。花色は白やピンク、黄色、アプリコットなどバラエティ豊富で、西洋種のセイヨウノコギリソウに至ってはハーブとして用いられることがあるのです。このハーブでは「ヤロウ」という別名で呼ばれることもあります。花壇などでよく見かけられるノコギリソウはセイヨウノコギリソウになります。開花期は5月中旬から8月中旬頃です。ノコギリソウの根から分泌液が出ますが、これは傍に生えている植物の病気を治して、害虫から守る効果があり、さらに益虫を呼び寄せる力があると言われており、コンパニオンプランツとしても有名です。日当たりは良く、乾燥気味の環境を好み、やせ地や荒れ地でも育つほど丈夫な花です。ただし、高温多湿の環境に弱いので風通しの良い場所であること、水はけの良い土壌が必要です。
ハクチョウゲは成長が早く、芽吹く力も強い植物です。樹高は50cm~1m程度で、細かい枝葉を密集させる性質があります。また刈込にも強いので、江戸時代から生垣や植え込みなどに使われてきました。ハクチョウゲは5月~6月頃に花を咲かせます。一重で直径は1cm程度と小さく、香りはあまりありません。外側が淡い紫色で内側は真っ白、満開時には雪が降り積もったように見えるため、英語名は「6月の雪=ジューン・スノー」と呼ばれています。葉は白い斑が入った丸くて小さな楕円形で、長さは6㎜~2cm程度。枝から対になって生えます。残念ながら、日本ではあまり実はなりません。花付きは悪くなりますが日陰でも育ち、乾燥や湿気にも強くて土質を選びません。病害虫にも強いので、ガーデニング初心者でも安心して育てられます。ハクチョウゲは日当たりが良く、風通しの良い環境を好みます。多少であれば日陰でも大丈夫ですが、ほぼ日が当たらない場所だと成長スピードは落ちるうえに、花付きも良くありません。また風通しが悪い場所だと、株が蒸れて弱りやすくなります。生垣の場合は花付きをあまり考慮しないケースが多いので、葉に白い斑が入った種類のものを選ぶと美しい見た目を実現できるでしょう。またハクチョウゲは耐寒性がやや低い植物です。北海道など冷え込みが激しい地域だと栽培が難しく、関東より北の地域では冬になると葉がパラパラと落ちてしまう可能性があります。寒い地域では盆栽や鉢植えにして、幼木や冬の時期は室内で育てるのがおすすめです。
ハルガヤとはスイートバーナルグラス(SVG)で原産地はヨーロッパです。イネ科の多年生植物で、北海道には明治から牧草として導入され野生化した草種です。草丈は20~60cm、乾燥するとクマリンの香りを発します。出穂・開花が著しく早く、種子と地下茎で増殖します。ハルガヤの被害実態は石狩、後志、空知や上川、留萌、宗谷およびオホーツク北部で特にハルガヤ優占草地が多く、オホーツク・十勝・根釧の一部で侵入が認められています。被害が多い地域では、ハルガヤ被度40%以上の草地が複数確認されています。ハルガヤは 5 月始から 7 月上旬頃まで長期にわたり出穂します。出穂後10日前後で開花します。開花4 週後には発芽能力を有する種子を生産します。種子生産時期は 6 月始と早く、種子量は10万粒/平方メートルと非常に多い種子を生産します。ハルガヤの生育特性を理解し、種子を落とさない圃場管理方法を検討しました。ハルガヤは桜餅の香りがします。 クマリンです。 乾燥すると香りが強くのなるのですが、そのままでも良く揉むと香りがします。 他にもシナガワハギなどにこの香りがあります。花粉の季節 イネ科の植物にはカモガヤやオオアワガエリの他、ハルガヤやホソムギなどがありますが、ほぼ同じ時期に飛散します。 4月下旬から飛散し始め、7月上旬にいったん終息し、再び8月下旬から9月下旬まで飛散します。
4月に入ると、春の花が順番を待たずに一斉に咲き出ました。その中の一つ、キク科の帰化植物「ハルシオン」があります。ハルシオンはアメリカ原産で、大正時代に園芸植物として入ってきました。当時は「ピンク・フリーペイン」というモダンな名前がつけられて、花屋の店先にさっそうとデビューしました。いつの世も同じで、たちまち新しもの好きな日本人に大人気を博しました。しかし、次から次へと新しい花が移入されると、いつしかハルシオンは忘れ去られ、店の隅へ、そして屋外へと追い出されてしまい、周辺の空き地に大繁殖し、「貧乏草」という名に落ちぶれてしまいました。さらに追い打ちをかけられ害草としての迫害を受け、除草剤による駆除対象となりました。それでもハルシオンは、辛抱しながら除草剤の免疫をつけ、大正、昭和、平成の三つの時代を生き抜いています。ハルシオンによく似た植物に「ヒメジョオン」がありますが、ハルシオンの方が春から初夏にかけて咲きだし、茎は中空で、茎につく葉は茎を抱き、茎と葉には軟毛が多くはえています。ヒメジョオンは初夏から秋にかけて開花し、両種が対面するのは6月頃の約1ヵ月間になります。なおハルシオンは、「春紫苑」であって、「春ジョオン」ではなく、ヒメジョオンは「姫女苑」であって「姫シオン」ではありません。両種とも区内の明るい草地に多く見られます。
ハルジオン(ビンボウグサ)は、北アメリカ原産の、キク科ムカシヨモギ属に属する多年草です。4月〜6月に白や淡い桃色の小さな花を咲かせ、花びらは糸のように細いのが特徴です。草丈は約30cm~100cmほどで、花びらの大きさは約2cmです。昔は観賞用の花として扱われていましたが、繁殖力がとても強いことから関東地方を中心に爆発的に増加し、現在では全国的にみられるようになりました。道端や野原、田んぼなどによく自生しているため、雑草としても扱われています。ハルジオン(春紫苑)の名前は、同じキク科に属する植物「シオン(紫苑)」に似ていることから、植物学者である牧野富太郎氏によって名付けられました。紫苑は秋に花を咲かせますが、ハルジオンは春に花を咲かせることから「ハルジオン(春紫苑)」と呼ばれるようになりました。また、ハルジオンは「貧乏草」という別名も持っています。これは、手入れが行き届いた家の庭には生えず、手入れのされていない貧乏な家の周りに生えることに由来しています。名前は春に咲き、キク科のシオンに似ていることから名付けられました。別名の貧乏草は、手入れの余裕がない様な貧しい家の庭にも咲くという意味です。一部の地域では、花を折ったり摘んでしまうと貧乏になると言われています。繫殖力が強く、在来の植物と競合し駆逐する恐れがある為、要注意外来生物に指定されています。
ヘラオオバコ(箆大葉子)は、ヨーロッパ原産の1年から多年草。持ち前の繁殖力と環境適応力で世界じゅうに広がっています。国内には江戸時代の終わりごろに渡来し、現在は全国各地の日当たりのよい場所でごく普通に見られます。乾燥にとても強く、幹線道路の路傍などにもたくさん生えています。株もとから細長い葉を多数出します。葉はややねじれ、表面には毛が多く生えています。ロゼットの状態で越冬します。5月から8月頃、株もとから次々と花茎を立ち上げ、その先に長さ1センチメートルから2センチメートルほどの円柱形の花穂をつけます。花茎は50センチメートルくらいになります。花は下から上に向かって咲き進みます。最初雌しべが顔を出し、時間差で雄しべが顔を出します。花粉を風の力で運ぶ風媒花なので、花粉症の原因植物にもなっています。ヘラオオバコのうち特に大型になるものは、オオヘラオオバコと呼ばれます。オオヘラオオバコは葉の長さ25センチメートルから40センチメートル(典型株10センチメートルから20センチメートル)、花の穂の長さ4センチメートルから8センチメートル(典型株3センチメートルから4センチメートル)で、ヘラオオバコの変種に位置づけられています。ただヘラオオバコは生えている場所の環境に応じて株の大きさが変動するため、オオヘラオオバコをあえて呼び分ける必要はないかもしれません。
ホザキナナカマドは、北海道や下北半島に自生し、夏季に真っ白い美しい穂先のような円錐花序を出すので観賞用としても美しい植物です。バラ科ホザキナナカマド属(Sorbaria)にはほぼ10種類が知られ、アジアと北アメリカに分布していますが、日本にはこのホザキナナカマド1種だけが自生しています。北海道ではごく普通に見られる樹高2~3m程度になる落葉低木で、長さ15~30cmになる大きな奇数羽状複葉を持っています。小葉は11から23枚ほどで、それぞれの小葉は長さ4~10cmほどの細長い楕円形で先が尖り、縁には鋭い重鋸歯がついています。6月から8月に写真のように長さ10~30cmにもなる円錐形の花序を出し、直径1cm足らずの白い花をたくさんつけるので、とても美しく華やかに見えます。5枚の花弁を持ちますが、雄しべが花弁の2倍の長さにもなるのが特徴で、全体としてふわりとした感じに見えます。果実は袋果で密毛があり秋には赤褐色に熟しますが、割れて5個に開裂します。葉の形がナナカマドに似ていることから名が付いたとされますが、ナナカマドの果実は開裂しません。日本北部ばかりでなく、中国北東部、シベリア、ウラル地方にも分布しており、中国では珍珠梅、とくに星花珍珠梅と呼ばれますが、茎の皮をはいで薬用とすることが知られています。腫れを消し鎮痛作用があるとされて、骨折や打撲傷に粉末にしてお湯に溶いて服用したり、粉末を練って患部に塗布したりするそうです。
アルメリアはイソマツ科ハマカンザシ属に属する多年草です。ヨーロッパや北アフリカを原産としますが、様々な種類が存在し、自生する場所もさまざまです。 冬の寒さに当たることで開花する性質を持ち、寒さに強いのはもちろん、暑さにも強く丈夫であることが特徴です。一日花ですが、次から次へと咲き続けるので、長期間花を楽しむことができます。花色は朱、ピンク、黄、紫など。花の雰囲気は多様で、黄色い花弁の先にオレンジ色と緑の模様が入るH・エレガンスをはじめ、変化に富んでいます。南アフリカにおよそ30種が分布する球根植物です。秋に球根を植え付けると、春に花を咲かせます。球根のタイプは茎が肥大した球茎です。先端のとがった球形で直径1.5cm~2㎝くらい、表面は網目状の皮で覆われます。葉っぱは細長い鞭状や線形で、縦方向に筋が入ります。 茎は直立するか、ジグザグに伸びます。主な開花期は4月~5月です。花は一日でしぼんでしまいますが、一本の花茎に数輪が付き順番に咲くので、いくつか球根を植えていると一定期間は花を楽しめます。花は6つに大きく裂けた星形で、花色は黄、クリーム、ピンク、藤、朱などがあり、パステルカラーのものが多いです。黄色地に、赤と緑の模様が入るエレガンス種のようなカラフルな種も知られています。多くの種類が球根や葉にアルカロイドを含み、有毒であるとされています。名前は「会合する」という意味のギリシア語「ホメレオ(homereo)」に由来します。
マサキは、日照不足や乾燥、塩害、煙害、刈り込みに強く、生垣や街路樹などに用いられる常緑低木です。葉は楕円形~倒卵形で厚ぼったくツヤがあります。葉縁には緩い鋸歯が入ります。「キンマサキ」などの斑入り葉も多く出回ります。葉が密生するので刈り込みを繰り返せば遮蔽性のある生垣になります。初夏に淡緑色の花を咲かせますが地味で目立ちません。秋にはオレンジ色の実をつけます。自然樹形は下部からよく枝分かれしてこんもりします。以前はよく植えられていましたが、近年は病害虫が目立つなどの理由で使用頻度は少なくなっています。しかし、上手に管理・剪定された生垣は遮蔽効果や美観の点で優れています。日当たりのよい場所が適地ですが、半日陰でも育ちます。乾湿両方に耐えるのであまり土壌は選びませんが、肥沃で水はけのよい場所を好みます。綺麗に育てるなら、きちんと剪定することと、病害虫に注意する必要があります。耐潮性があるので潮風の当たりやすい場所でも耐えて生育します。成長が早いので、年2回あるいは3回程度刈り込みます。条件がそれほど良くない場所に植栽している場合は病害虫の駆除をしっかり行います。適期は上記ですが、花や実を期待する樹木ではないので、冬季と新芽展開時を除けば時期を気にせず刈り込めます。
ムクゲは、アオイ科フヨウ属(ハイビスカス属)に属する落葉性低木です。原産地は、中国で、中国名は「木槿」(ムーチン)といい、ここから転じて「ムクゲ」と呼ばれています。別名を「ハチス」とも言われています。「槿花一朝の夢」とは、一日だけの栄華をムクゲの花にたとえたもので、他のフヨウ属と同様に朝開いて夕方にはしぼむ一日花で、朝開暮落花の別名もあります。しかし、生長する枝の葉腋に次々とつぼみをつけるため、花期は長く、梅雨明けから9月まで、次々と咲き続けます。もともと日本に産するフヨウ属には、ハマボウ、モクフヨウ、ブッソウゲなどがありますが、いずれも暖地性の植物で、これらに比べるとムクゲが最も耐寒力があります。刈り込みに強く、よく分枝するので、生垣に多く使われています。また、丈夫で放任しておいてもまとまった樹形を作るので、庭の花木として植えられています。そのほか、最近では、矮化剤を使った鉢物も市販されています。古くから栽培され、親しまれてきた花木ですが、品種名がはっきりしたものは少なく、最も普通に見られるのは、紫紅色で5弁の一重咲きで、花弁の底部が濃紅色の、いわゆる底紅咲きといわれているものです。白色花弁で底部だけが鮮やかな紅色の一重咲きの「日の丸」だけが園芸品種名らしい名前がついています。茶人・宗旦が愛した花といわれ、別名・宗旦ムクゲといわれ、この品種だけが茶花として珍重されています。
シロツメクサと同じ仲間ですが、葉は大きく、茎は立ちあがります。茎の先端に赤紫色の丸い花の穂がつきます。英語では、シロツメクサのホワイトクローバーに対し、アカツメクサはレッドクローバーと言います。花期は長く、春から秋にかけてだらだらと咲き続けます。市内では、新しく土地を造成した場所や、土手の草地に特に多く見られます。モンキチョウやベニシジミなど、さまざまな昆虫が花の蜜や花粉を求めてやってきます。葉に模様が入る株がありますが、その模様は株ごとに微妙に異なります。また、花色は赤紫色が基本ですが、その濃淡や色調は株によってだいぶ異なります。4つ葉もできますが、シロツメクサのそれと比べとはるかにレアなものです。アカツメクサ(ムラサキツメクサ)は、シロツメクサの仲間で赤紫色の花を咲かせることから名前の由来になっています。しかしたまに白い花を咲かせる株も存在し、市内でも見ることができます。これをシロバナアカツメクサ、またはセッカツメクサと言います。アカツメクサなのに白花とはなんとも紛らわしいのですが、花色がちがうだけで他の特徴はアカツメクサと同じです。
ヤブガラシは至る所の空き地にはびこる迷惑雑草です。この草が繁茂すると、その土地の養分を吸収し、付近の藪を枯らしてしまうというのでヤブガラシと言われるとのことです。当地では、貧乏蔓等と言って嫌われております。おそらく庭がヤブガラシに覆われているような家は、貧乏暇なしで、除草をするゆとりもない貧乏人の家だ、ぐらいの意味合いなのでしょう。しかしその花はよく見ると面白い形をしていて、子どもの頃には、ロウソクバナと言っていたように記憶しています。この花を見ると、子どもの頃の夏が思い出され、夏の気分が盛り上がる花です。花序は扁平な集散花序で、4個の花弁は淡緑色で、平たく開き、後には反転します。雄しべは4個です。すぐに花弁と雄しべが落ちてしまうので、あとには雌しべだけが花盤に取り残されることになります。この姿が、花盤の色とも相まって燭台に蝋燭を立てたようにように見えます。ロウソクバナの所以でしょう。花弁のある間は、雄しべが着いていますので、雄花の働きをし、花弁の落ちたあと(雄しべも落ちている)で雌しべが成熟して雌花の働きをして、自花受粉を避けているもののようです。週刊朝日百科植物の世界(朝日新聞社)37巻には、「花は自家不和合性であるために結実率は低い。」とあります。
シライトソウは、低山の森林や草に深く覆われた場所で、湿った崖や斜面に生えます。常緑性で、葉はショウジョウバカマに似ていますが、つやがなく、はっきりとした葉柄があります。晩春から初夏に花茎を伸ばし、先端に長さ10~15cmの花穂をつけます。花弁は長さ7~12mmで細長く、先端がやや広がっています。各地域でさまざまな型が見られるため、この種にはいくつかの変種が設けられていました。現在ではそれらの多くがアズマシライトソウやチャボシライトソウなどの亜種や変種に分類し直されています。属名のChionographisはラテン語の「雪」と「筆」の合成語です。江戸時代に日本に滞在したスウェーデンの植物学者で医師であるツンベルク(チュンベリー)が、日本での呼び名としてシライトソウという名とともに「雪の筆」という呼び名を記録しており、この名を翻訳したものです。
スミレは、日当たりのよい草地に多く生える多年草ですが、 1株の寿命は 数年程度と比較的短命です。すみれば自然庭園のシンボルでもあるスミレですが、秋はどうなっているのかというと、実はスミレは春だけではなく、夏や秋にも花をつけ種をとばしているのです。夏や秋は、春のような紫色の花は咲きませんが、閉鎖花と呼ばれるものをつけ、自家受粉して種ができるのです。春に咲く花は、他家受粉のため、あまりたくさんの種ができません。その分、夏や秋の閉鎖花では、自家受粉で、たくさんの種をつくるのです。春しか目立たないスミレですが、じつは夏も秋もしっかりとがんばっているのです。