あしたば(明日葉)とは、世界に誇れる日本原産のセリ科の多年草で、「今日摘んでも明日には新しい芽が出る」といわれるほど成長が早く、生命力の強い植物です。セリ科には薬用植物が多くみられますが、あしたば(明日葉)もその一つで、江戸時代には天然痘予防に用いられました。もっと古くには「不老長寿の妙草」として、秦の始皇帝や漢の武帝が日本までこの妙草を求めて家来を遣わしたという伝説があります。あしたば(明日葉)は、野菜の中でもビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な上、それらがとてもバランスよく含まれています。また植物としては良質のタンパク質を含有していることがわかっています。ひとつひとつの栄養素でみれば、より含有量の多い野菜もありますが、あしたば(明日葉)ほど多種の成分が含まれ、それぞれの量も多い野菜はほとんど類を見ません。まさに野菜の王様と呼んでふさわしい、今もっとも注目の健康野菜です。あしたば(明日葉)の葉や茎を切ったときににじみ出る黄色い汁は「カルコン」といって、植物ではあしたば(明日葉)にしか含まれないフィトケミカル(ポリフェノール類)の一種です。「カルコン」は、美容や健康維持のために役立つ成分として、近年注目を集めています。
イワカガミダマシはヨーロッパアルプスに自生する多年草です。雪解け水が流れ出すころに花芽をもち上げ、下向きに赤紫色でベル形の花を咲かせます。花は花弁の先端が細かく裂け、イワカガミの花に似ているので、「イワカガミダマシ」の和名で親しまれています。葉は常緑で円く、次々と開きながらマット状に広がります。新芽と同時期に細い花茎を伸ばして花が数輪咲きます。夏の間も次々と新芽を出し、株をふやしながらさらに広がります。秋を過ぎたころから花芽形成が始まり、晩秋には、芽の中心にげんこつのような花芽を抱いた状態で冬を迎えます。自生地では6月から8月に咲きますが、栽培下では開花は4月中旬から5月下旬です。雪解け水のある場所を好む高山植物なので、どちらかというと寒冷地向きの植物で、暖地ではなかなか栽培が難しい植物です。ポット苗が多く流通していますが、いずれも寒冷地でつくられたものです。
本州中部の日本海側から北海道の低山から亜高山帯の岩場に生えています。高さは1m前後で、枝や幹には棘が多く見られます。奇数羽状複葉で小葉が2〜3対あり、その小葉は先端の2/3程度のみ鋸歯があります。葉柄の根元には先の鋭い托葉が葉柄を巻くようにして付いています。6〜8月に5つの花弁を持つピンク色の花を咲かせます。果実は紡錘形で9月ごろに赤く熟します。よく似ている近縁種のタカネバラに比較して小葉が大きく、花も果実も大きめです。溶岩流などにより形成された洞窟、岩盤が割れる節理が開口した開口節理などトンネル状の空隙が傾斜を持つと、地下の岩の隙間で冷やされた空気が上から下にゆっくりと吹き出します。この穴を風穴と呼びますが、夏でも2〜5℃に保たれた風が吹き出し、その近隣は涼やかです。過去には天然の冷蔵庫として野菜や果実の貯蔵場、また蚕の卵の保存用として広く利用されてきました。風穴植物群とは、この風穴からの冷気を拠り所にしている植物群のことです。オオタカネバラもこの植物群を構成する一つです。氷河期に南下した後に温暖になる際に風穴の周りで生き残り、隔離分布したと考えられています。
オキナグサは本州、四国、九州の日当たりのよい草原や林縁に生える多年草です。花後にできるタネに白く長い毛があり、そのタネが密集して風にそよぐ姿を老人の白髪に見立てて「オキナグサ(翁草)」と呼ばれているといわれます。地下には太いゴボウ根状の根茎があり、春に暖かい日ざしが注ぐと芽を出します。葉を開くと同時に白い毛で覆われた花芽を伸ばし、葉の伸びきる前に、短い毛で覆われた赤紫色の花を下向きに咲かせます。花弁に見えるものは萼片です。この花が数輪咲いた姿はとても情緒があり、タネの姿と相まって愛好家が多い理由もうなずけます。庭植えにすると、より風情や情緒が楽しめるでしょう。花後に葉の展開が終わると、花茎が長く伸びて、先端にタネを実らせます。あとから開花した茎の成長が止まると、葉はほとんど出ることもなく夏を迎えますが、わきにはしっかりと側芽をつけており、秋には株を充実させます。やがて落葉して休眠に入ります。
エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆)は、日本原産のリンドウであり、北海道と本州では山形県より以北に分布します。主に亜高山~高山帯、湿った草地などに生育します。エゾオヤマリンドウの草丈は20~40㎝で直立し、低地に生育するエゾリンドウに比べて少し草丈が低くなります。葉は長さが5~8cmほどで披針形、長楕円形、先端が尖った形状をしており、茎に対生し、葉の裏面は表面に比べて若干白色を帯びています。鮮やかな緑色の葉ですが、秋になると葉は少し紅葉を思わせる色合いへ変化していきます。花期は8~9月、茎頂や茎上部に少数の花を束状に咲かせます。秋の訪れを知らせる花ですが、7月中旬頃から咲きだす個体もあるそうです。花はリンドウらしい濃青紫色の色合いで長さ3~5㎝弱の釣鐘型の形状で、先端が浅く5裂していますが、私が観察したときは先端が閉じてしまっていたので5裂している部分は確認することができませんでした。他のリンドウ科の花のように目一杯花が開くわけではなく、開花時は先端部がほんの少しだけ開く程度です。黒岳ロープウェイの係員さんに伺ったところ「花が咲くのは晴れた日の日中だけで、雨や曇りのときは日中でも花は閉じてしまっています」とのことでした。花を支える萼片が濃紫色で長さはバラバラでした。
カタクリは早春の落葉樹林を飾る植物として、季節の話題にのぼる球根植物です。主に低山から山地の落葉樹林、ときに亜高山帯の雪が遅くまで残るくぼ地などに生えます。「春植物」と呼ばれる植物の代表で、早春にほかの草木に先駆けて芽生え、花を咲かせると、ほかの植物が大きくなる初夏には休眠に入ってしまいます。そのため、地上部は春の3か月間ほどしかありません。しかし、秋には地下で根が伸びて発芽の準備を整えています。花は茎先に1輪咲き、花弁のつけ根にはW字形の模様があります。花は夜や、気温の低い日には閉じて開きません。葉は開花株では2枚、まだ花が咲かない株では1枚つきます。葉には茶色と淡緑色の斑紋のあるものと、ないものがあります。地下には細長い薄皮に包まれた球根(鱗茎[りんけい])があります。タネにはエライオソームという塊がついていて、これが好物のアリによって、別の場所に運ばれます。カタクリは栽培容易とはいいがたく、市販品には山採り株が多いため栽培はおすすめしません。‘パゴダ’のような丈夫な園芸品種を選ぶか、時間をかけてタネから育てるとよいでしょう。海外の山草会の会員になると、外国産の多くの種類のタネを入手できます。
キキョウは東アジアに広く分布する多年草です。日当たりのよい草原に見られますが、国内ではそのような場所が激減したため絶滅危惧種になっています。茎はまっすぐに伸びて高さ10~120cm、先端近くに直径5~7cmの花を1~10数輪咲かせます。根は太くまっすぐに伸びて、ニンジンを小ぶりにしたような形です。この太い根は漢方薬にも利用されます。古来より美しい花が人々に愛され、万葉の時代から観賞されていました。「キキョウ(桔梗)」といえば秋の七草としても有名な植物ですが、「イワギキョウ」はその高山種です。漢字で書くと「岩桔梗」で、その名の通り高山の岩場や砂礫地(されきち)を中心に生息しています。イワギキョウの魅力といえば、なんと言ってもその可愛らしい「花」です。開花時季は7~8月頃で、5つに分かれた、鮮やかな青紫色の花を横向きに咲かせます。イワギキョウの葉は1.5~5cmほどで、細くへら状の形。葉の周りにはギザギザとした鋸歯があります。キキョウの葉にも同じく鋸歯がありますが、イワギキョウのほうが幅の狭い葉を持っています。
春の訪れを告げる、スプリング・エフェメラル(春植物)の一つです。早春の雪解けの頃から咲き出します。名は花がキクに似ることに由来するそうです。花は同じキンポウゲ科のアズマイチゲによく似ますが、アズマイチゲが白色だけであるのに対して、白色から淡いブルー、淡紅色そして紅紫色と変化に富みます。キンポウゲ科のキクザキイチゲに花弁はありません。花弁のように見えるのは萼片です。萼片が花弁の役割も担っています。 萼片の数は図鑑には「8〜13個」とありますが、実際にはもっと変異があります。山地の落葉樹林内に生える多年草です。高さは10〜20cmほどです。茎葉は3個が輪生し、3出複葉で小葉は羽状に深裂し、鋸歯があります。葉はほぼ水平に展開し、アズマイチゲのように垂れ下がりません。葉の形状や生え方が、アズマイチゲと識別する一番わかりやすいポイントです。地面から葉までが茎、葉から花までが花柄です。花柄には毛が生えます。アズマイチゲの花柄は無毛と有毛があるので、毛の有無だけを見て識別することはできません。萼片、葯、花糸は白色。花糸は基部まで白色で、基部が紫色になるアズマイチゲとの識別ポイントになると思います。
早春、ブナ帯の木々が芽吹く頃、到る所で落葉から顔をのぞかせるキクザキイチゲの群落があります。「春のはかない草花」(スプリングエフェメラル)の代表的な早春植物です。同種に、フクジュソウ、カタクリ、ニリンソウ、エゾエンゴサク、ショウジョウバカマなどがあります。天気が悪ければ花は開かず、首を垂れています。早春に咲き、白から紫色の花が1個つき、花弁はなく、ガク片が花弁状に見える。茎葉は3枚輪生し、深い切れ込みになる。ニリンソウ、カタクリと並び大きな群落を形成しています。カタクリと混生する場合も少なくありません。良く似た仲間にアズマイチゲがあります。花期は3~5月。草丈は10~20cm。キクザキイチゲはキンポウゲ科ですが、花びらがが菊のような形で咲き、1本の茎に1輪をつけるので、菊咲一華と書きます。別名は、菊咲一輪草(キクザキイチリンソウ)です。
ギボウシは日本から海外に渡り、逆輸入されてきた美しい植物。草姿が美しいのでオーナメンタルプランツとしても人気があります。ギボウシは東アジアに分布する多年草で、日陰でもよく育つ観賞価値の高い植物です。葉は平たく、多くが楕円形で、縦に筋が入ったように見える葉脈が特徴的です。ギボウシは、アジアの中でも特に日本に数多くの種類が自生しています。これらがヨーロッパに渡り、多くの改良品種が生まれました。ギボウシは日陰でもよく育つ上に、葉色や草姿が美しいので、「ホスタ」と呼ばれ国内外に愛好家がいるほどです。ギボウシには非常にたくさんの園芸品種があります。葉のサイズや色、斑入り、花色、花のサイズなどバリエーションが豊富でキリがありません。日陰の庭の中でオーナメンタルプランツとして存在感を発揮します。擬宝珠は「ギボシ」と読みます。寺院や橋などの欄干の飾りに使われるタマネギのような形をした装飾です。ギボウシの名前の由来は、生長しかけの花茎の先端がこの擬宝珠に似ていたからだそうです。
アザミの仲間で最も多く栽培されているのはノアザミで、切り花用の「ドイツアザミ」はノアザミの改良種です。ノアザミは、日本列島の海岸沿いからやや高い山の、日当たりのよい草原や道端に生えています。そのほか中国東部、台湾にも分布します。きわめて花の時期が長く、春から秋にかけて開花します。花は直径3cmで、茎の先端に上向きに1~3輪つき、総苞が粘ることや、根元の葉は開花時には枯れているのが特徴です。分布域が広いだけあって各地にさまざまな亜種や変種が見られ、その土地のほかのアザミと交雑して雑種をつくっていることもしばしばです。アザミの仲間は世界におよそ300種あります。日本にはそのうちの1/3が集中しており、大部分が日本列島の特産で多くは限られた地域にのみ見られます。日本列島全土の亜熱帯の海岸から亜高山帯まで、また湿地帯や崩壊地、森林など、さまざまな場所のいろいろな環境に生えています。アザミの仲間は種類の識別が難しいことで知られています。識別するには花の大きさ、つき方、総苞の形、総苞片の形とつき方、開花期に根元の葉(根出葉)の有無などを確認することが必要です。
秋の七草の一つであるハギは、『万葉集』に最も多く詠まれていることからも、古くから日本人に親しまれてきた植物だといえます。ハギの仲間は種類が多く、なかでも最も広く栽培されるのが、ミヤギノハギです。刈り込んでも枝を1m以上伸ばすほど生育おう盛です。枝垂れて、晩夏から秋にかけて、多数の赤紫色の花を咲かせるのが特徴です。自生がないため、人為的に作出されたと考えられ、本州日本海側の多雪地帯に分布するケハギから選抜されたとも、中国原産であるともいわれますが、その起源は明らかではありません。ユリやラン、ツツジが、特定の種類の植物名ではなく、共通の特性をもつグループの総称であるように、「ハギ」は、ヤマハギやマルバハギ、ケハギなどの野生種や、その園芸品種の総称として使われています。どれも栽培容易で、秋の風情を楽しむことができます。日本全土に自生しています。ミヤギノハギに比べて全体に繊細な印象で、花の時期になっても枝はほとんど枝垂れません。野趣に富んだ姿が魅力があります。
ビオラパルストリスは、ビオラ属の多年生の広葉草本です。北アメリカとユーラシアの北部の湿った牧草地、沼地、小川の土手に生息しています。種の上皮palustrisはラテン語で「沼の」を意味し、その共通の生息地を示します。ビオラはスミレ科の多年草植物で、パンジーと同様、花期が長く、庭や鉢植えで栽培されることが多い植物です。ビオラの花は、パンジーに似ています。耐寒性・耐暑性に優れているため、秋から翌年の初夏まで花を咲かせます。花の色は多彩で、紫色、青色、黄色、ピンク、白などさまざまです。ビオリンを主成分に数種の毒素を種と根茎に持ちます。花は多少なら食べても大丈夫です。花はエディブルフラワーとして用いられますが、犬や猫が茎や根を食べないように注意しましょう。神経毒・心臓麻痺があり得ます。
ミヤマアキノキリンソウはキク科の植物。別名コガネギクといい、夏の終わり、秋の気配が濃厚になったころ、高山帯を黄色く彩る高山植物です。北海道から、本州北部以北に分布し、高山帯であれば比較的どこにでも生えている普通種です。高山帯から亜高山帯の草地に生えますが、岩場や礫地などにも生えることがあります。草丈は20~50cmで、花は茎の先端に集まって咲くことが多いです。よく似たアキノキリンソウは低山から亜高山帯近くに生え、花は茎の途中からも多く咲き、花の下部である総苞がミヤマアキノキリンソウに比べて細いです。とはいえ、中間的な形のものもあり、見分けるのは難しいことも多いです。ミヤマアキノキリンソウは、亜高山~高山帯の草地などに生え、茎の高さは15~70センチ。茎頂や葉腋から伸びる円錐状花序に、直径1.5~2センチの黄色の頭花をかたまってつけます。頭花は中心の筒状花と、その周りの舌状花からなっています。総苞は広鐘形です。総苞片は3列で、先が尖っています。下葉は長楕円形~卵形で、先がとがり、基部は細くなって葉柄の翼につながる。葉の両面に細かい毛があります。上葉はしだいに小さくなり、幅も狭くなります。
藪萱草は、ススキノキ科ワスレグサ属の多年草です。以前はユリ科とされていましたが、DNA解析を元に、今はススキノキ科に分類されています。6月から9月頃、スカシユリに似た鮮やかなオレンジ色の花を咲かせます。日本各地の土手、野原、林縁に自生する藪萱草は、地下茎で広がる性質があり、群生する姿が見られます。最近では、園芸用の苗も流通しています。藪萱草は、奈良時代よりも前に、食用や薬用の目的で中国から伝来した萱草が野生化したものです。もともと人の手によって育てられていた植物のため、今でも山野よりも人家に近い地域によく見られます。薬用になるのは、つぼみ、葉、根の部分です。つぼみにはキンシンサイ(金針菜)、根にはカンゾウ(萱草)という生薬名がついています。キンシンサイを煎じた液には解熱作用があり、カンゾウを煎じた液には利尿作用のほか、むくみ、不眠に効くそうです。葉にも利尿作用があります。
カシワ餅を包む葉でおなじみのカシワは、痩せ地や乾燥に強いので、海岸の丘陵、岩礫地に群落をつくることが多いです。5月5日の端午の節句にお供えされるカシワ餅に葉が使われる木で、寒冷地に多い。丸く尖らない波形の鋸歯をした大きな葉が特徴です。冬になっても一部の葉が枯れたまま落葉せずに残るので、ユズリハと同じく子孫繁栄を象徴する縁起の良い木とされています。ドングリはクヌギに似て卵球形で、下部は総苞片が密生する殻斗に包まれています。 和名は、その葉に料理を盛ったり、食物を蒸したりする時に使ったことから「炊(かし)ぐ葉」の意味から。昔は、料理に使ったり食べ物を盛ったりする葉は、どれもカシハと呼ばれていました。柏餅は、平たく丸めた上新粉の餅を二つに折り、間に餡をはさんでカシワの葉で包んだ和菓子のこと。5月5日の端午の節句の供物として用いられています。カシワとミズナラは、同じブナ科コナラ属に属し、葉がラセン状につくこと、葉柄がほとんどない点で良く似ています。両者の葉を比べると、カシワの葉は大きく、縁は大きな波形ですが、ミズナラの葉は小さく、縁は鋭い三角状をしている点で容易に区別できます。
桐(キリ)はゴマノハグサ科キリ属の広葉樹です。成長が早く、短期間で木材が得られる樹種です。早生で花も美しいので海外でも園芸樹として植栽されています。 桐(キリ)は日本では最も軽い(密度が低い)木で、断熱性及び調湿性(防湿効果)に優れ、同時に収縮・膨潤率が低く木材としての狂いが小さいことも特徴です。日本の木製家具の中でも、特に桐(キリ)の箪笥は優れた家具といえます。現在も桐材は、神社、寺院、宮廷の儀式で歌や舞に用いられる琴や箏として使われ続けています。また、桐は紋章として、皇室や日本国、貨幣の装飾などに使われています。かつて日本では女の子が生まれたら、キリの木を植える習慣がありました。将来、娘が嫁ぐとき、娘とともに大きく育ったキリの木でタンスにして持たせてあげるためです。キリの成長のサイクルと人間の成長のサイクルが適合することを先人は知っていたのでしょう。将来を見通して、育てて、使うという日本人の美しい習慣です。
クヌギは山形県、岩手県を北限に沖縄県まで広く分布しています。樹高15メートル以上の大木になります。コナラと並んで武蔵野の雑木林の主役です。ブナ科の実を総称してどんぐりと呼びますが、どんぐりとは団栗と書き、団とは丸いという意味だそうです。丸い栗のような実、といった意味でしょうか。縄文時代には、人間にとっても貴重な食糧であったそうです。クヌギの実は「王様どんぐり」の愛称があるくらい立派なものです。花が咲いてから1年経たないと熟しません。雌花が受粉したあとには小さな殻斗ができますが、そのまま越冬し、翌春に生長をはじめ、秋に成熟します。このように時間をかけてどんぐりを成熟させる木は、ほかにウバメガシ、アカガシ、スダジイ、マテバシイ、アベマキがあります。また、クヌギと同じブナ科のクリの葉の形はそっくりです。コナラがたまご型の葉なのに対し、クヌギとクリは細長い葉で、鋸歯の先が細長く針のようにとがっています。この針の部分がクヌギは色がぬけて白っぽくなりますが、クリは緑色であることで見分けられます。日本には、ブナ科の樹木が多く、常緑樹のカシやシイの仲間、落葉樹のブナやナラの仲間等がたくさんあります。
クマノミズキは本州、四国、九州に分布する落葉の高木です。三重県熊野地方に生育するミズキという和名がついているように、近畿以西に多いです。ミズキは水分を多く含む、水っぽい木であるとの意味ですが、生育には当然水分を必要とし、谷沿いなどの水分条件の良好な場所に生育する。生長は速く、条件がよい場所では1年間に1m以上も生長します。土壌が良ければ、伐採跡にも多数生育します。材は柔らかく、カミキリムシ類などの食害を受けやすい。谷沿いの攪乱地などに侵入し、急速に大きくなる樹木であると考えられます。ミズキとは葉が対生であること、葉柄が葉身の半分程度で短いこと、棚状の枝とならないことなどにより区別できます。岡山県ではクマノミズキは低地に分布し、県北の海抜の高い地域にはミズキが分布しています。
ケヤキは、ニレ科ケヤキ属の植物です。大木かつ背の高い木であり、上にすくすくと枝を伸ばす、立ち姿がとても美しい木です。分布は北海道以外の全国です。街中であっても、公園、街路樹、住宅地、学校や施設、ありとあらゆるところに植えられおり、散歩していれば必ず目にする存在です。日本中の様々な自治体が県の木や市の木などの、シンボルとして指定しています。落葉広葉樹に分類され、春は一斉に葉を芽吹かせ、夏はセミが集まる涼しげな木陰を作り出し、秋になると赤い葉っぱを落葉させ、冬になるときれいなシルエットの木立を見せてくれる、日本の風景を作り出す存在です。成長が早くて寿命も長いので、全国あちらこちらで巨木が観察できます。種子や花粉は風が散布する風媒花です。見た目の美しさでも広く利用されているケヤキですが、木材としてもとても優秀です。耐水性・耐久性に優れ、使える期間も長く、なおかつ木目も美しいという特徴があります。建築にも、家具にも、彫刻にも、あらゆる用途に使われます。乾燥に非常に時間がかかる材なので、未乾燥のまま使ってしまうと、割れ、ねじれや狂いが発生しやすくなります。家の大黒柱など、ずれてはいけない物に使う際には、10年程度の乾燥期間を置くことが多いようです。皆が知るところでいうと、和太鼓や、餅つきに使うような木臼に使われています。
コデマリは、細い枝や葉が見えなくなるほど白い多数の花を咲かせ、枝垂れる姿がとても見事で、庭木や切り花として利用される、春を代表する花木です。同じ仲間のユキヤナギよりも遅く、赤褐色の新梢が伸びたあと、4月から5月に開花します。コデマリの属するシモツケ属は、シモツケやユキヤナギなど、小型で丈夫な育てやすい観賞価値の高い花木が含まれる重要なグループで、北半球の温帯に100種ほどが分布します。コデマリは古く中国から渡来し、江戸時代初期から観賞用に栽培されてきました。和名は花の集まり(花序)を、小型の手まりに見立てたものです。4~5月頃、枝垂れた枝に沿って手毬状の白い花をたくさんつけます。葉の色はやや青みがかり、株から立ち上がった枝は上部で放射状に広がるので、柔らかい印象になります。性質は強健で、適度な湿り気のある水はけの良い土壌が理想的です。剪定は枝先を詰めず、古くなった枝や小枝を下部から切り取って間引くようにすると樹形が乱れません。冬期に緩効性の肥料や堆肥などを根まわりに鋤き込むと病気になりにくいです。
コナラは、実はドングリになるので誰もが知っています。では、「花は?」となると首をかしげる人も多いのではないでしょうか。コナラの花は、4月、葉の芽吹きの直後に咲くのです。垂れ下がった細い枝にたくさんの花が付きます。華やかな花弁はなく、花序の形状からは風媒花のように思われますが、結構虫が花を訪れるので、花粉は虫媒もされているようです。コナラは武蔵野の雑木林を作る代表的な樹木です。かつて雑木林の木は、15年~25年毎に伐採され、薪や炭に使われていました。伐採しても、コナラは切り株から新しい芽が生じ新しい木が成長します。これを萌芽更新と呼びます。ドングリとは、ブナ科の植物の果実の総称です。種子ではありません。もちろん、果実ですから、中に種子は入っていますし、大きくて栄養(主にデンプン)をたくさん蓄えています。例外的にクリの果実だけはドングリと呼ばないのですが、クリで説明すると、食べるところが種子で(正確には種子内部の子葉)、硬い茶色の皮は雌しべの子房が変化した果実の部分なのです。
小葉カエデであるコミネカエデは、本州、九州、四国にある日本原産のスネークバークカエデ群のムクロジ科の顕花植物の一種です。その和名は小峰楓です。それは、高さ6〜10 mの小さな、時にはずんぐりした木で、細いアーチ型の枝があります。樹皮は最初は滑らかで縞模様で、成熟した木では粗く鈍い灰色になります。コミネカエデの花は6~7月に咲きます。上向けに突きだした総状花序に10個以上の小さな花が集まっています。5mm程度の小さな花ですが、よく見ると花弁よりも長い8個の雄しべが勢い良く出ています。コミネカエデの葉は、普通5裂し、鋸歯の切れ込みが美しいので、すぐに覚えられます。特に、葉の先端が長く尾状に伸びることでミネカエデと区別されます。ナンゴクミネカエデとの区別はやや難しいですが、葉の基部の切れ込みがナンゴクミネカエデでは大きく、7裂しているように見えます。また、コミネカエデの方が花弁の枚数が少なく、翼果の開き具合が大きいです。葉は対生で、葉身は 長さ6~9cm、幅5~8cmの長五角形です。葉柄は2~5cmです。掌状に5深裂し、裂片は卵状披針形で、先端は尾状に長く伸びて鋭く尖り、縁には重きょ歯と欠刻状きょ歯があります。基部は心臓形で、基部から5~7本の掌状脈が出ています。
タニウツギは、北海道~本州の山野に自生する落葉性の低木です。沢や谷間の水が流れているそばによく自生し、そこからタニウツギの名前があります。「ウツギ」と名前が付いていますが、卯の花の別名でも親しまれているウツギはユキノシタ科の植物でスイカズラ科の本種とは別のものです。ウツギ同様、枝の髄(ずい)の部分がチクワのように中空になるのでこの名前が付いたのではないかと思われます。アジサイが咲き始める初夏にろうと状のかわいらしい花を咲かせます。花は葉の付け根に2~3輪ずつまとまって付き、日当たりの良い場所で育った株は枝を覆うほどたくさんの花を咲かせてくれます。葉はやや先のとがった卵形でフチに小さなギザギザがあり、裏面は白い毛が密生し、枝をはさんで同じ位置に2枚の葉が左右に付きます。品種に白い花を咲かせるシロバナタニウツギ〔f. albiflora〕があります。花色が白→紫→紅色と変化するハコネウツギや濃い紅ピンク色の花を付けるオオバニウツギなどの近縁種も庭木として親しまれています。
春を代表する花のひとつである「ツバキ」は、早いものだと秋のうちからぽつぽつ咲き始め、翌年の5月頃まで咲き残る花期の長い花です。ツバキは自生する常緑の高木で、庭に植えたり、垣根にすることが多い木でもあります。身近なツバキには「ヤブツバキ」と、日本海側にある低山帯の豪雪地帯に分布する「ユキツバキ」の2種があります。『新訂牧野新日本植物図鑑』にはツバキの名を冠した植物として、「トウツバキ」「ナツツバキ」「ヒメツバキ」を含めた5種が収載されています。ここではヤブツバキを中心に説明します。ヤブツバキは、本州北端から琉球列島を経て、台湾の一部にまで分布するツバキ科の常緑高木。芽生え、幼葉には毛が多少ありますが、夏季の成木は全株無毛で、葉は艶々としており、花は肉厚離弁花で、花弁が散らず雄芯と一緒に落ちます。花後に結ぶ果実の種子は良質な油を提供します。花形については、侘び、寂びといった気品のある花から、華麗な花まで多様です。園芸品種は約1,000種(外国産を含めると約2,000種)以上といわれています。花は古代には赤色や白色程度でしたが、現在は紅色、桃色、紅白絞り、紫色、紫黒色など多彩で、一重咲きや八重咲きの花もあります。
「トチノキ」とは、「トチノキ科の落葉高木」のことです。北海道から九州の山地まで幅広く生息しています。実は食用として使用し、木の部分は家具や器具などの建築材料として、さらに樹を庭木として使用することができます。ブナ帯の沢沿いに生え、車輪状の葉が大きい落葉高木。春から初夏にかけて、上向きに円すい状の大型の花を多数咲かせ、ミツバチやハナバチ類の蜜源になります。秋、クリよりもツヤヤカで大きい実をたくさんつけます。デンプン質が豊富で、天日乾燥させると10年以上長期保存できることから、縄文時代から食用として利用されています。トチノキの葉はギザギサ(鋸歯)がありますが、ホオノキの葉はギザギサがなく滑らか(全縁)です。トチノキは、手のひらを広げたような葉の付き方をしています。もともと1枚の葉でしたのが5枚の小葉に分かれたと考えることができます。だから、5~7枚の小葉の付け根はぴったり1カ所に集まっています。ホオノキは、複数の葉が集まって掌状複葉のように見えますが、よく見ると、それぞれの葉の付け根が微妙にずれています。下から見ると輪状に葉がついているように見えます。 名前の由来は、いろんな説がありますが、アイヌ語由来説が有力です。アイヌの人々はトチの実を「トチ」、トチノキの幹を「トチニ」と呼んだことに由来しています。ほかに、実がたくさんなるので、「十千(トチ)」などがあります。
ナナカマドとは、漢名を花楸樹(かしゅうじゅ)といい、七回かまどに入れても燃え尽きないほど燃えにくいことから名がつけられました。別名は雷電木(らいでんぼく)といわれ、雷よけや厄よけになるといわれています。ヨーロッパでは神聖な木として尊ばれ、果実が民間薬として使われていたことがあります。6~7頃、枝先に花径1cm程の白い小花をたくさんつけます。小さな白い五弁花がたくさん咲き、オレンジ色の実から秋には赤い実になります。真っ赤に紅葉した葉とのコラボレーションは息をのむほどの美しさです。紅葉した葉が落ちても実は残り、冬枯れの季節に華やかさを残してくれます。公園や街路樹として植えられているため、散歩の際出合うチャンスがあることも。堅くて丈夫な材は、彫刻用などとして大切にされています。中国古代の医学書「黄帝内経素問」に「肺は秋によく働き、大気から「気」を吸収し冬に備える、さらに秋は陽の気が減少していく季節。出来るだけ早起きして朝の陽の気を取り入れよう」と書かれています。ナナカマドは、太陽と土からの両方のエネルギーを吸収している花木です。まさに陽の気の塊。その花木は私たちに強いパワーを与えてくれます。
ヒメウツギは、背が高くならないほふく性のウツギの仲間です。非常に丈夫な上に、綺麗な白い花が咲くので庭でもよく用いられています。初夏に、伸びた茎の先に白い花を穂のように咲かせます。花後その枝が垂れてほふくして横に伸びます。葉は細長く縁のギザギザが目立ちます。株はよく分枝してこんもりまとまります。挿し木やほふく枝で簡単に増えます。とにかく丈夫なので過保護にする必要はありません。日向から半日陰の肥沃で適湿な場所が適地ですが、強健なので広い幅の環境で育ちます。横に伸びすぎたら、その部分を切り戻します。余裕があれは花がらを切り取りますが、しなくても構いません。通常は花後に枝先を切る程度の弱剪定だけで良いです。伸びすぎて仕立て直したい場合のときのみ落葉期に強剪定しますが、その年は花芽を切ってしまうことになります。地際から2~3節残して一気に刈り込みます。洋風や和風、自然風いずれの庭にも合います。丈夫で日向でも半日陰でも使えるのでとても使い勝手がよいです。グランドカバーや根じめに使うのが一般的ですが、花壇や鉢植えにも向きます。
ブナは北海道南部から九州まで全国に幅広く自生している落葉広葉樹です。日本国内ではブナという名称で古くから親しまれていますが、海外では「ビーチ」という名称が一般的です。そのため、国産の木材はブナ材、海外産のものはビーチ材とよばれ区別されていますが、名称は異なっていても同じ樹木が原料となっています。ブナにもさまざまな種類があり、その数は120種にもおよぶとされています。日本のブナは樹皮が白っぽい色をしており独特の模様が見られ、葉の断面は波を打ったように凹凸があります。また、ブナは高さ30m以上の大木に成長することも多く、その雄大な姿から「森の女王」の異名ももちます。日本では鎌倉時代の頃から漆器の原料として用いられてきた歴史があり、その後も工芸品の生産には欠かせない木材でした。日本ではナラの木として親しまれていますが、北米を中心とした海外ではオークともよばれます。オークは比較的温暖な環境下で育つため、ブナやビーチに比べると生育スピードが早いという特徴があります。
ホウノキは、日本特産種.高木の夏緑広葉樹.葉は大形で倒卵形です。花も大形で枝の先端に単生し,甘い芳香があります。花びらは淡黄白色で大きく,雄しべと雌しべが多数あります。果実は長楕円形で秋に熟しますが,紅熟した種子は白い糸状の種柄で下垂します。和名は大きな葉に食べ物を盛りつけたり,包んだことから名づけられたものです。またホオノキともいいますが,これはホウが転訛したものです。薬用には樹皮を用います。生薬名をコウボク(厚朴)といい,健胃消化薬や瀉下薬,鎮咳去たん薬とみなされる漢方処方に配剤されています。初夏に咲く木本植物の花は,白色系が目立つような気がします。白色系の花は清々しい季節感をさそい,そして初夏の青空によく映えるように思います。淡黄白色の花をさかせるホウノキも,まさにそのような花の一つです。ただし花は高い樹冠に咲いていることもあり,身近に観察できる機会はそう多くはありません。運よく身近に接する機会がありましたら,よく観察して見てください。まるで大きなハスの花のようです。また特有の甘い芳香は,さぞかし多くの蝶や蜂などを誘うものと思われます。しかし蜜の分泌はほとんどないため,訪れる昆虫と言えばコガネムシなど甲虫類が主たるものだそうです。
モウソウチクはは直径20㎝ほどにもなり、日本に生育するタケ類の中では最大となる種です。中国大陸が原産地とされますが、今日では寒冷地では少ないものの、日本全国に植栽されています。当園のある岡山県倉敷市真備町地域でも栽培が盛んで岡山県における一大産地となっています。筍は岡山県南部では4月中旬ごろ発生のピークを迎え、地中に長く伸びた地下茎から発生します。筍の皮を剥いた際、下部に赤い点状の突起が並んでいるのを見たことがある方もおられるかと思いますが、これは根の成長点で、筍の発生初期には、地下茎から養分や水分を得ているため、根は未発達で伸長していませんが、筍が地上に顔を出して数日のうちには太い根が筍の下部より伸長しだします。食用にするには、根が伸長していないものほど柔らかくて美味しいため、筍の産地では地上に筍が顔を出す直前に見つけ、掘り取るということです。花はめったに咲くことがありませんが、まれに一部の枝に花をつけることがあり、話題となることがあります。タケ・ササ類には一斉に花をつけ(一斉開花)、開花して種子を生産した後は地下茎を含めた全体が枯死(一斉枯死)する現象があることが知られており、マダケではその周期が120年との報告があります。モウソウチクでは部分開花した花の種子から栽培した集団が67年目に一斉開花・枯死したとの記録がありますが、これはむしろ特殊な事例で、実際には本種の一斉開花・枯死の周期はもっと長いものであるようです。
クスノキ科の落葉低木です。漢方名は烏樟(ウショウ)。日本固有種といわれています。北海道と沖縄を除く全国で見られ、おおまかには北からオオバクロモジ、クロモジ、ケクロモジの3種類がよく見られるようです。上には高層木が葉を広げている、少し照度の低い場所を好みます。木漏れ日を精一杯集められるよう、上から見ると、葉と葉が重ならないようについていて、大きい葉も小さい葉もあります。枝を手折ってみると、爽やかな香りがします。積雪の重みに反抗せず、そのまま押されて雪の下になっています。春、雪解けがすすむと、ぐっと曲げて雪の下になっていた枝がパシッと起き上がり、どの木よりも先に葉を広げます。花も開葉と同時に開花、黄色い小さな花です。
森でよく見かけるきのこベスト10なるものが、もしもあるとするなら、間違いなく上位に入るドクベニタケ。夏から秋にかけての、けっこう長い期間、広葉樹の森であろうが、針葉樹の森であろうが、とにかく、いたる場所でお目にかかれるきのこです。緑の森に、赤い笠、白い柄、ときたら、これはまさに、クリスマスカラーです。そのうえ、いかにも、きのこきのこしたシェイプ。視覚的、被写体的に、文句のつけようがありません。世の中には、食べられるきのこ、しかも、おいしいきのこにしか、価値を見出さない方もいらっしゃると思いますが、いざ、森へ出かければ、こんなにきれいなきのこを、けっこう頻繁に見ることができるんです。その名も、ドクベニタケ、と、名前に「毒」がついているくらいですから、毒を持っていない方が不自然です。名実ともに、立派な、毒きのこです。
ニセと名付けられていますが、松露が食材として珍重される一方、このニセショウロは毒きのこです。昔は間違って食べた人も大勢いたんじゃないでしょうか。食毒の成分は不明ですが、中毒症状としては不快感、嘔吐、貧血症状、悪寒、頭痛などを引き起こすと云います。まあ毒があるから忌み嫌われているのは仕方がないとして、ちゃんとした名前を与えるべきです。百歩譲っても、せめて「ドクショウロ」くらいな名前にしてあげたらよいと思います。別に本物もニセモノもないのに「ニセ」とは何事だと、きこの自身は思っているに違いありません。ちなみに本家本元の松露はまったく見つかりませんが、このニセショウロはたくさん見つけることが出来のす。しかも杉の木の根元に群生している場所があります。ニセなんて呼ばれているので、あえてグレているんじゃないでしょうか。
ヒトクチタケは、大きさも、形も、クリの実そっくりな可愛らしいきのこです。きのこは植物と違って光合成ができないので、生きるのに必要な栄養を外部から摂取します。木材腐朽菌とか、寄生菌とか、共生菌とか、きのこが発生する基物によって、いろいろな分け方があったりしますが、実際のところ、きのこだって、生きものなのだから、自分が好む餌を食べているだけです。ヒトクチタケは、枯れてから1〜2年のマツなどの針葉樹や立ち枯れの木、倒木等に生えます。逆に、ヒトクチタケが生えていたら、枯れてから1〜2年である、と言えます。ヒトクチタケ、という名前は、クリのような形で、ひと口で食べられそうですら、という意味ではなく、時期がくると、きのこの下半分に、口のような穴がひとつだけあくのです。
日本と中国の原産で、コナラ、ミズナラ、クヌギ、シイなどのタンニンを含む枯れ木に寄生するキノコです。分類学的な位置づけとしては、過去にヒラタケ科に属していたこともありましたが、今日では、遺伝子レベルの研究が進み、現在のキシメジ科の分類となっています。食用の歴史は古く、江戸時代に始まったとされています。しいたけ栽培発祥の歴史については諸説あるようですが、江戸時代に豊後の国(現在の大分県津久見地方)で炭焼きをしていた源兵衛さんという人が、炭焼きの残り木にしいたけが生えているのを見て栽培をひらめいたとされています。当時はクヌギなどの原木にナタで傷をつけ、しいたけの胞子が自然に着床するのを根気よく待つというものでした。
なめこは日本原産の茶褐色の傘を持つキノコで、全体がヌルヌルとした粘質に覆われているのが特徴です。この独特のぬめりの主成分であるペクチンには、コレステロールや糖類の吸収を抑制する働きがあります。また腸内環境を整える作用もあり、便秘や下痢予防にも効果的です。他にもビタミンB群やカリウム、マグネシウムなどのミネラル、食物繊維などを多く含んでいます。なめこはモエギタケ科スギタケ属のキノコです。日本原産のキノコで、中国や台湾などでも見られますが、食用とされているのは日本だけです。天然のなめこは広葉樹の倒木に群生するかたちで自生していますが、最近では袋や瓶におがくずにふすまや米ぬかなどの栄養剤を混ぜて固めた床に、なめこの菌を植え付けて育てる菌床栽培や、ブナやトチなどの樹木を用いて育てられる原木栽培によって生産されています。
シャカシメジは、小さな傘を丸くぞっくり並べた姿をお釈迦様の顔に見立ててついた名前ですが、普通はセンボンシメジの名で呼ばれる事が多いです。千本とまではいきませんが、数十本の傘が押し合いへし合いしている様子は見事で、高さは20cmにもなり、手にするとずつしりとした重さを感じます。広葉樹と松の混生林に出て、毎年同じ場所に姿を見せる事が多いです。歯切れ、味とも最高で、おろし和え、卵とじ、天ぷら、きのこ飯、炒め物、煮物、などどんな料理にも合い、非常に美味しいです。
「匂いマツタケ味シメジ」といわれ,昔から日本の食用菌の中で最もおいしいきのことして知られてきました。残念ながら今のところ,本種もマツタケと同じく栽培できないでいます。市販されている栽培シメジの多くはヒラタケで,また,ブナシメジが同じホンシメジの名で市場に出回っています。ホンシメジはコナラ林,時にはコナラと松の混生林に出て,傘は3~8cm,ひだは白く,柄の根元は初め徳利形にふくらんでいますが,成熟につれて上下同大になります。本種と間違って食べる中毒日本一の毒きのこにクサウラベニタケがあります。肉色のひだが特徴で,ホンシメジのひだは白です。充分ご注意を。味・歯切れともに最高で,塩焼き,きのこ飯,茶碗蒸し,天ぷら,炒めもの,煮ものなどが非常においしい。
初めコウタケは香茸だと思うほど香りが強いです。ところが本当は皮茸だとか。事実,信州などでは今でもカワタケと呼んでいます。姿を獣の毛皮に見立てたと云いますが,それはささくれたった傘の表面なのか,一面針を密生させた傘裏を指しているのだろうか。本種をゆでるとビックリします。ゆであがっだ傘裏が濡れねずみに似ています。皮茸の名の由来が納得できます。本種の地方名は,シシタケ,クマタケ,イノハナなど,獣にちなんだものをはじめ数多いです。それほど,この大形で荒々しい姿のきのこは山村の人たちに人気が高く,秋,山里の農家の軒下に本種が干されているのをよく見かけます。コウタケは広葉樹林内に群生し,傘は10~25cm,中心の穴は柄の根元にまで達し,傘裏は一面の針で強い芳香があります。なお,ケロウジなど本種に似て下面が針で,食べられない小形のきのこが何種かあります。煮ると黒汁が出ますが,味,歯切れはよく,おろし和え,炒めもの,煮もの,天ぷら,きのこ飯などがおいしいです。
マツタケはキンモクセイの花と一緒に出ると云います。両者の気温条件が同じなのでしょう。地中の温度が19℃にまで下がると出始めるなど,マツタケについては細かく調べられていますが,今でも栽培できないでいます。マツタケが松の根と結びつき,栄養交換をしながらきのこを出すという特殊な生活をしているからで,シイタケのように原木にコマを打ち込んで大量栽培,というわけにはいかないです。全国的な松山の荒廃で生産量が最盛期の100分の1にまで落ち込んでいるのが高値?の花の理由です。傘の径日8~20cm,秋,主として赤松の林に群生しますが,梅雨時にも少し発生することが知られています。特有の高い芳香は数ある食菌中の白眉です。香りを生かして,塩焼き,土びん蒸し,きのこ飯,まつだけ酒などが非常においしいです。