日本人の主食であるお米は、古くから大量に、かつ安全に美味しく作るためのさまざまな工夫がなされてきました。近年では品種改良や機械化、手法の整備など、さらに美味しく、安全で質の良いお米を作るための取り組みが行われています。1つ1つの田んぼによって土が違い、毎年の天気が違うので、それに合わせた土づくりが必要です。特に、雨の多い日本では酸性の土壌になりやすく、根が傷んだり養分吸収を妨げたりしてしまう事もあります。この場合は、苦土石灰を撒くなどして土壌の酸度を調整します。苦土石灰は、土のアルカリ性を増すために使われる、白色の粉末状もしくは粒状の肥料です。次に、稲に必要な栄養素を十分に補給するため、不足している栄養素を中心に元肥を施します。加えて、有機肥料で、有益な微生物(バクテリア)が住みやすい環境も整える必要があります。また、水はけの良さは大切ですが、良すぎても肥料や水分を保てません。水はけが良すぎたら、粘土を加えて適度な水はけに調整します。もともと粘土質すぎる場合は掘り起こすだけで大変なので、そもそも使わないことが多いです。
清浄な水をいつでも必要なときに田んぼに入れるため、水の整備を行います。田畑への水やりのことを灌漑(かんがい)と言い、稲に対する灌漑は「水田灌漑」とも呼ばれます。(例)パイプ灌漑:地下にパイプをめぐらし、河川の上流にある取入口から直接田んぼに入れます。田んぼ1枚1枚に対し、水道の蛇口がついています。必要なときに必要なだけ水やりができます。また、田んぼの水がもれないよう、周囲には畦(あぜ)という土手のようなものを作ります。生育のためには水を入れたり抜いたりする過程が必要なので、水の整備は特に重要です。トラクターなど、大きな農業機械を使った作業がしやすいよう、田んぼの区画整理を行います。昔は10アールを1単位としていましたが、やがて30アールが基本となり、今では1ヘクタール以上の田んぼも存在するほどです。大型機械は使いやすく時間短縮になって作業効率が良い反面、高価なので数軒の農家が共同で購入することもあります。
土地や気候に合わせた丈夫で収量の多い生産性の高い品種、消費者が好む美味しい品種など、さまざまな観点から選ばれます。そのための品種改良が行われることもありますが、田植え・収穫・乾燥などの作業が一度にならないよう、時期をずらして以下のような品種をバランスよく栽培するのが一般的です。昔ながらの方法で行う「はざかけ」とは、田んぼに杭を立て、刈り取った稲穂を吊るして天日干しする方法です。機械乾燥よりも時間はかかるのですが、干している間にも熟していくためより美味しくなるとされています。農薬や化学肥料はお米の安定した生産を助け、病害虫から守る大量生産に向いています。もちろん、用法・用量を守れば安全ですが、農薬や化学肥料を使わない昔ながらの農法が美味しいという意見もあるため、以下のような農法でできるだけ農薬を使わず作られることもあります。
合鴨農法は、水田に合鴨を放し飼いにします。害虫や雑草を食べてくれ、フンが有機肥料になります。有機肥料の見直しでは、稲作農家と畜産農家が協力し、ワラと家畜のフンを発酵させて質の良い「堆肥」を作る取り組みなどを行っています。コイ農法は、鯉が田んぼを泳ぎ回ることで、泥がかき回されて雑草の生育・発芽を抑え、除草効果を得る事ができます。レンゲ栽培農法は、秋に田んぼにレンゲの種をまき、冬の間に育て、春に花を咲かせたレンゲを土に鋤き込んで肥料にします。レンゲは空気中の窒素を取り込んで根に溜め込むので、窒素肥料の代わりになります。海藻リキッド農法は、海藻のミネラルで葉緑素を増やし、保湿力を高めて気温や空気の影響を和らげ、作物の鮮度を保ちやすくしています。また、こだわりのある生産者は、これ以外にも独自の農法や栽培方法で、できるだけ農薬を使用しないでお米を栽培しています。
米・食味分析鑑定コンクールで4年連続金賞を受賞し、日本一美味しいお米を作る生産者として有名な遠藤五一さん。スタジオジブリの映画「おもひでぽろぽろ」のトシオ役のモデルの一人となったことでも有名で、有機農業発祥の地とされる山形県高畠町で米作りを行っています。寒暖の差が大きい環境に加え、最上川から流れる冷たく清らかな伏流水を使用し、さらに、乾燥は「はざかけ」という昔ながらの方法で手間暇かけて行っています。作っているのはJAS有機米、特別栽培米(農薬化学肥料不使用)、特別栽培米(農薬化学肥料7割減で除草剤1回使用)の3種類です。中でも、JAS有機米は農薬や化学肥料不使用農場での栽培を2年以上継続し、工程表や投入資材の一覧を提出するなど、非常に高い品質が求められる農法です。日本で古くから行われてきた米作りは、その手法や工夫もさまざまです。丈夫で質の良い稲を作るための土作りや水の整備、生産効率を高めるための機械化や品種選びなど、各農家がそれぞれの田んぼや気候、ニーズに合わせた工夫をしています。
古くは、全国の山間部で蕎麦が栽培されていましたが、明治時代より、次第に栽培地が少なくなったといわれています。一般的には、蕎麦は五穀(米・麦・粟・豆・黍)の中には入らず雑穀とされていますが、米の収穫が困難な地域などでは五穀の一つとされていた例もみられています。蕎麦の実の大きさは3〜5mm
と不揃いで、色は淡茶や濃茶色です。現在、一般に栽培されている品種より背丈が高く1m以上にも育つので、風に弱く病気になりやすい事から、栽培年の気候により収穫量が左右されます。栽培地区では昔から「蕎麦は乾燥させるほど美味い」といわれており、収穫から1年ほど置いた蕎麦も碾(ひ)いて粉にしています。現在でも、主な調理法として手打ち蕎麦にして食していますが、昔は蕎麦粉をお湯でさっと湯がいて蕎麦掻(そばがき)を作り、甘いもの、辛いものなど好みの味付けに仕上げて、素朴なおやつとして食されてきました。
昔から各家庭の手打ち蕎麦は、蕎麦粉100%使用のつなぎがない「十割」です。長年の勘で蕎麦粉も水も目分量で、耳たぶほどの硬さにこね上げます。一般的にこねる際は、蕎麦粉のでんぷん質を引き出すため熱湯を加えますが、この蕎麦粉には粘り気があるので、ぬるま湯でも比較的楽にこねることができるといいます。切り幅が2mm(一般的に1.5mm ほど)と少し太めで、芳醇な蕎麦の香りを楽しむことができます蕎麦は、水はけの良い場所を選びます。茎の背丈を高く育てると、風で倒れて病気になりやすい事から、堆肥のみを使用するか、カリや過リン酸など背があまり伸びにくい肥料を使用します。一般的には種を蒔いてから収穫するまでの期間は「蕎麦75日」ともいわれていますが、代々「お彼岸の40日前ははずれない」と言い継がれており、種を蒔く時期は、秋彼岸より40日前の8月16日頃で、畑にばら蒔きをします。4日目あたりで発芽し、1か月ほどで白い小さな花を付けます。
収穫時期は、種蒔きから2か月余り経過した、10月20日前後となります。目安としては、1本の茎になっている実のうち、3粒ほど黒くなった頃です。茎にある養分を実にしっかり吸収させるため、早く刈り取ります。刈り取った後は畑に島立てして、晴れ続きなら10日ほど、途中雨が降れば2週間ほど天日に干し、シートの上で杉の枝を使って実を叩き脱穀します。脱穀した実は、唐箕(とうみ)で枯れ葉や枯れ茎、ゴミなどを選別した後、3〜4回水洗いして沈んだ石などを取り除き、3日ほど天日に干します。昔から「よく乾いたものの方が碾(ひ)きやすく美味しい」といわれており、十分に乾燥させる事が重要です。収穫した蕎麦は紙製の袋に入れ
( ビニール袋は不可 )、納屋もしくは室内の涼しい場所で保管します。
「お茶の栽培」というと、一面に広がる茶畑と茶摘みのシーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 お茶が挿し木で育つことや被覆と呼ばれる栽培法、摘採した茶葉が日本茶になるまでの作り方などは、知られることの少ない部分でもあります。それぞれの地で根を張り、育った茶葉が手元に届く過程から見えてくるのは、茶園の日々の努力とお茶に込められた想いです。お茶の原料となるチャノキ(茶の木)は、ツバキやサザンカと同じ仲間の植物で学名を「カメリア・シネンシス」と言います。お茶の花は白色、ツバキは赤やピンクと色は異なるものの、花や葉、実の形はよく似ているのが特徴です。比較的温暖な地域を好むチャノキですが、「北限のお茶」として古くから栽培を続けているのが青森県や秋田県。自家用のお茶栽培の他、現在は保存や復活に向けた取り組みも行われています。
また、新潟県と茨城県を結ぶラインから南側は、商業生産のためのお茶栽培が盛んな地域。お茶の三大産地と呼ばれる静岡県や三重県、鹿児島県をはじめ、日本最南端となる沖縄でもお茶は栽培されているのです。チャノキは、温暖で一定の雨量のある場所で育つ亜熱帯性の植物です。世界でも年間平均気温13℃以上、年間降水量1,300ml以上の地域で栽培されています。そのため、日本国内でも年間平均気温が14~16℃。夏の最高気温は40℃を超えず、冬場の最低気温は-5~-6℃より下回らない環境がお茶栽培には適しています。また、栽培から茶摘みの時期にかけて適度な降水量があり、台風や霜の心配がないことも大切なポイントです。このような気象条件の他にも、お茶の品質を大きく左右するのがチャノキが根を張る土壌。降り注いだ雨水と養分をしっかりとたくわえる保水性と保肥力、また空気や水が通りやすい通気性を兼ね備えた土壌が、チャノキを力強く健やかに育てます。
永年作物であるチャノキは、一度植えると数十年はその場で栽培しなければなりません。チャノキは植物には珍しく酸性の土壌を好む「好酸性植物」でもあるため、栽培を始める際には気候や地形とともに、土壌選びが重要な要素となるのです。チャノキは本来、採取した種子をまいて増やすものでした。しかし「自家不和合製植物」(じかふわごうせいしょくぶつ)であるチャノキは、異なる品種の花粉同士でなければ種子ができないという特性を持っているのです。つまり、できあがった種子には、必ず他のチャノキの性質が含まれているということ。お茶の生産が広まり品質を一定に保つことが必要になった現在は、チャノキの繁殖には「挿し木法」と呼ばれる方法がとられています。生育の良い枝から採った「挿し穂」を苗床で1~2年育て、茶園に定植しても、一定量の茶葉が収穫できるようになるまでには7~10年。実に長い年月をかけ1本のチャノキは成長するのですが、質の良い茶葉を収穫するためには、農家の更なる努力と工夫が必要となります。
紅花は黄色から赤になる花を咲かせるキク科の1年草です。花弁から染料や口紅の元になる色素がとれることから,古くから南西アジア・北アフリカを中心に広く栽培されてきました。山形では江戸時代に最上紅花の栽培が盛んでした。このため,紅花は山形県の県花に指定されています。キク科ベニバナ属ベニバナで、耐寒性の一年草です。秋に種をまき,夏に花を咲かせ,翌冬に枯れます(山形では早春に種をまきます)。成長すると草丈は0.5~1m,葉は5~10cmほどになり,初夏に半径2.5~4cmのアザミに似た花を咲かせます。咲き始めは鮮やかな黄色の花ですが,やがて色づき,赤くなります。種子は花1つにつき10~100個ほど,ヒマワリの種を小さくしたような種子がつきます。葉のふちに鋭いトゲがあり,このため花摘みはトゲが朝露で柔らかくなっている朝方に行われました。
ベニバナの原産地はまだ確定していません。地域によって多数の品種が育てられています。原産地の有力な候補としては,古くから栽培されていたインドやエジプト,アザミ類の野生が多いアフリカ・ナイル川流域(エチオピアなど),およびベニバナ近縁の野生種が多い中近東付近(アフガニスタンなど)があげられています。最近ではゲノム(遺伝子情報)の比較なども行われており,中近東のベニバナ属の野生種に染色体数やゲノム構成の一致するものが確認されています。紅花の代表的な特性は,花のもつ色素です。紅花の花には黄色素サフロールイエローと紅色素カルサミンの2種類の色素が含まれていて,いずれも染め物などに利用されています。サフロールイエローは水溶性で簡単に色素が取り出せるため,安価な衣料品の染めや料理の着色などに使用されます。一方,カルサミンは発色がよく,高級な衣料品や化粧の紅などに利用されています。こちらは水に溶けないため,この色素を取り出すために紅餅などのさまざまな技法が開発されました。
ラベンダーは地中海沿岸原産のシソ科の植物で、高さは種類にもよりますが20cm~130cmくらい、細く真っ直ぐな茎の先に紫色の小花を咲かせます。花は紫色が有名ですが、白やピンクの花を咲かせる種類もあります。開花期は5~7月で、乾燥した地域を好み、日本では北海道のラベンダー畑が有名です。多くの薬効をもつハーブとして、消毒や防腐、美容など様々な分野で古くから利用されてきました。現代でも、ラベンダーはその香りのよさや効能からアロマオイルをはじめ様々な用途に使われています。ラベンダーの中でも最も知られている「イングリッシュラベンダー」は、アングスティフォリア系のラベンダーでコモンラベンダーとも呼ばれています。ラベンダーの中でも特に香りが強い品種で、すっと伸びた細い茎の先に丸みがある粒々とした濃い紫色の花をつけます。他の品種のラベンダーより寒さに強く、北海道など国内で最も多く栽培されています。
ストエカス系のラベンダーで、パイナップルのような花穂の先にうさぎの耳のような、リボンのようなものが付いている見た目が特徴です。この耳の部分は細長い花びらに見えますが、苞葉(ほうよう)と言って花穂を守るために葉っぱが変異したものなのだそうです。早咲きで花期が長く、耐暑性がありますが耐寒性はやや弱めな品種です。赤紫や白色などの花を咲かせる種類もあります。デンタータ系のラベンダーで、葉の縁に鋸歯のような細い切り込みがあり、フリンジのように見えることからそう呼ばれているそうです。ほかのラベンダーと比べて紫色が薄く、花は四季咲き性があり長く花を楽しむことができます。ラベンダーはその姿や多くの効能から生まれた花言葉を持っています。控えめで優しい花姿や香りのよさから「繊細」「優美」という意味を持ち、また効能のひとつに鎮静作用があると言われていることから「沈黙」という花言葉もあります。
抗菌や殺菌の作用があるため、古代ではラベンダー入りの水で洗濯をしていたとも言われており、名前の由来がlavareという「洗う」を意味するラテン語からきているように「清潔」という花言葉もあるそうです。また、「あなたを待っています」という花言葉もあり、これは恋心を告白できずに愛しい人を待ち続けた「ラベンダー」という少女が、一輪の花になってしまったというヨーロッパの逸話が由来になっているそうです。ラベンダーの香りは、ストレス解消や不安解消に効果的とされ、その鎮静作用やリラックス効果は有名です。寝る前にラベンダーの香りをかぐと安眠に効果的ともいわれています。古くから消毒液にも利用されてきたラベンダーには、抗菌作用や殺菌作用が期待でき、その抗菌・殺菌作用を活かして天然の防腐剤としても活用することができます。他にも、ラベンダーに含まれる「酢酸リナリル」は痛みを和らげる鎮痛作用、胃腸の不調を解消する作用や炎症を抑える作用などがあると言われており、その効能の多さに驚くばかりです。ラベンダーの花には強い芳香があり、見た目も可愛らしいのでドライフラワーにしたり、リースやポプリにしたりするのがおすすめです。
ポプリとはハーブや香辛料、アロマオイルなどを混ぜ合わせて熟成させたもの。ポプリを小袋に入れてサシェ(におい袋)にしたものをクローゼットやタンス、下駄箱などに入れておけば、防虫・防臭効果が期待できるとともに素敵な香りを楽しませてくれます。また、ハーブバスにしてお風呂で香りを満喫するのもおすすめ。花の部分を湯船に浮かべるだけで、見た目も香りも贅沢なバスタイムになります。ラベンダーは花の部分に強い香りがありますが、実は茎や葉も特有の香りを放っており、有効的に活用できます。花を取り除いて茎と葉のみで作ったグリーンリースにしたり、お茶パックなどに入れて湯船に浮かべハーブバスにしたりと、花と同じように活用できますが、花とはまた違った香りを楽しむことができます。ラベンダーの葉をティーポットに入れてお湯を入れ少し蒸らせば、ハーブティーの完成。花の方を使ったハーブティーよりも森林を感じさせるような香りが楽しめます。カモミールやペパーミントなど他のハーブと組み合わせたハーブティーもおすすめです。
菊は中国など東アジアが原産のキク科の植物です。日本には奈良時代に伝わり、江戸時代になると品種改良が盛んに行われてきました。和菓子や着物などに菊柄が用いられることも多く、庶民に親しまれていた花ということがうかがえます。菊の開花時期は9~11月頃が一般的で、白色や黄色、ピンク色の花を咲かせます。一年を通して日当たりや水はけのよい場所でよく育ち、日が短くなることで花が咲く特徴があります。菊の種類は200品種以上もあるといわれ、種類によって花色や花の大きさなど特徴も違います。菊には日本で誕生した「和菊」と欧米で品種改良された「洋菊」があり、同じ菊でも見た目は大きく違いますよ。和菊は「古典菊」とも呼ばれ、江戸菊など地名の名前がつく種類が多い印象です。厚物は花びらが幾重にも重なり、盛り上がったような花姿の大菊です。代表的な菊の種類で、菊花展などで見かけることが多いです。外側の花びらが長い種類は、厚物ではなく「厚走り」と呼ばれています。江戸菊は、江戸時代に庶民の間で流行した古典的な中菊です。一度平らに咲いてから中心の花びらが順番に立ち上がり、折れたり曲がったりなど品種によって花姿も変わりますよ。
一方、洋菊は「ポンポンマム」や「スプレーマム」など種類が多く、かわいらしい雰囲気の花姿が多いですよ。ポットマムは、鉢植えで育てられるように品種改良された菊です。ポンポン咲きでピンク色の「ヴェレーナ」や、鮮やかな黄色い花を咲かせる「イングリッド」などの園芸品種があります。クッションマムは、アジア原産の菊の原種をもとに誕生した園芸品種で、鉢植え向きの菊です。秋になるとかわいらしい花がたくさん咲き、華やかな雰囲気ですよ。主な園芸品種は、白い小花を咲かせる「コモドール」などが知られています。スプレーマムは、1本の茎から分岐してたくさんの花をつける菊です。スプレー状に花を咲かせて、花もちもよいですよ。主な園芸品種は、ピンク色の花を咲かせる「セイアメリ」などです。ガーデンマムは、日本の菊が海外で品種改良された菊です。鉢植え用に改良されましたが、寒さに強いことから地植えでも育てられますよ。花もちのよい「ミスティック」などの園芸品種があります。ポンポンマムは、丸いフォルムをしたかわいらしい花姿が特徴の菊です。
品種が多いことがよく知られていて、「ローズチャーミング」や「ラブベリー」などの名前がかわいらしい園芸種などもあります。菊には和菊と洋菊があり、種類によって見た目や特徴も大きく異なります。種類によって花の大きさも違い、花が大きくなるとインパクトもありますね。鉢植えで育てるならクッションマム、地植えならガーデンマム、切り花ならポンポンマムなどがおすすめです。初心者の方でも安心できるような無料の育て方相談サービスも充実。菊を育ててみたい方は、ぜひともお気に入りを見つけてみてください。秋を代表する花である菊(キク)は日本で古くから愛されてきたお花で、桜と並んで国花のひとつです。お供え花のイメージも強いですが、近年では品種改良によりさまざまな色・形の美しい品種が流通しており、季節を感じるフラワーギフトとしての人気も高くなっています。菊はキク科キク属に分類される多年草。草丈30cm~1m程度の高さにまで成長し、楕円型の花びらが密集した花姿です。黄・白・ピンク・オレンジ・紫・赤などさまざまな色で咲き、9~11月頃に見頃を迎えます。寒さに強く秋の代名詞でもありますが、近年では栽培方法の進歩により、1年中お花屋さんで見かけることができるようになりました。
原産地は中国で、日本には奈良時代に薬用や鑑賞用植物として伝わったとされます。平安時代になるとその美しさが貴族の間で特に愛好されるようになり、旧暦9月9日(現代の10月中旬頃)には「重用の節句」が別名「菊の節句」とも呼ばれるようになりました。鎌倉時代には後鳥羽上皇により皇室の紋とされ、後には公家や武家に家紋として下賜、蒔絵や衣装の文様としても流行し、暮らしの中に取り入れられるようになっていきます。さらに江戸時代には園芸品種が開発されて、現在では約200種ほどに。多くの人から愛されるお花となりました。日本で開発された園芸品種を「和菊」、欧米で改良されて日本へ伝わった品種を「洋菊」と呼びます。花の大きさごとに「大輪菊」「中輪菊」「小輪菊」と分類されます。また食用品種も広く流通しています。
お花屋さんで「マム」と呼ばれているのを目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは菊の学名である「Chysanthmum(クリサンセマム)」の略称で、主に欧米で開発されて日本に伝わった洋菊の品種を指します。和菊には、栽培の過程で脇芽(葉や茎の付け根から出る芽や枝のこと)を摘み取り、1本の茎に1輪の花を咲かせる菊を「輪菊(リンギク)」と、1本の茎に一重の複数のお花をつける「小菊(コギク)」とがあり、マムはこれらの種類と区別するための呼び名です。洋菊のうち、1つの茎が枝分かれして複数の花を咲かせるスプレー咲きが「スプレーマム」、ピンポン玉のように丸い花を咲かせるものが「ピンポンマム」、特に大きな1輪咲きのものが「マム(ディスバッドマム)」などと呼ばれています。菊(キク)の花言葉は「信頼」「高貴」「高潔」「高尚」です。
奈良時代に中国から薬用・鑑賞用として日本へもたらされた菊は、その薬効と美しさからか「不老長寿」の象徴でもありました。同時に貴族や皇室でも深く愛された花で、これらの花言葉は、その気品のある姿形や薬草としての信頼のほか、高貴な人々に重用されてきたことに由来すると思われます。ユリやカーネーション、胡蝶蘭など、お葬式では祭壇や棺を飾るのに白いお花が使われますが、その中でももっともよく見かけるのが白い菊(キク)です。故人に捧げる献花としては、特に定められた品種はありません。お葬式に菊を使うようになったのは明治時代からと言われており、これはフランスで葬儀の際、祭壇に白い菊を飾る文化があったことが元になっていると言われていますが、はっきりとした由来のある説ではないようです。その他、「国花や皇室の紋章に使われている格調の高い花だから」「花の香りがお香の香りと似ているから」「菊酒を飲むと長寿になると言われていることから、参列者の健康祈願として」「邪気を祓う力がある」などの説がありますが、いずれも確たる由来はないようです。
もともと菊は丈夫で花持ちが良い品種として知られていました。また種類が多く他の花とも合わせやすいため、今のように生花の保存や流通手段が発達していなかった頃でも、葬儀に使いやすかったということは言えるかもしれません。そこに、これまで挙げたような「格調高く縁起が良い」「香に似た花の香り」「長寿祈願」といった要素が合わさって、総合的に菊の花が選ばれるようになったのかもしれません。菊には古来から邪気を払い繫栄をもたらす力があると信じられてきました。「菊の節句」とも呼ばれる重陽の節句では、菊を飾り、菊の香りを移した「菊酒」を飲んで無病息災や長寿を願います。縁起の良い長寿祈願の贈り物として、菊の花は敬老の日のプレゼントにぴったりです。敬老の日のある9月第3週は、ちょうど菊が見頃を迎える時期でもあり、季節を感じるギフトとしてもおじいちゃん・おばあちゃんに喜んでもらえます。
「信頼」「高貴」「高潔」「高尚」という花言葉を持つ菊は、共に生きていく2人が愛を確かめ合う結婚記念日やブライダルのプレゼントにもよく似合います。不老長寿を象徴する花に、衰えることのない永遠の愛を重ね合わせても素敵です。色や咲き方が豊富で、他の品種とも合わせやすい花なので、パートナーが好む色や雰囲気のアレンジメントや花束もオーダーしやすいでしょう。結婚記念日などはバラの花を贈るというイメージも強いですが、赤い菊には「あなたを愛する」という花言葉もあるので、バラが好きではない方や、いつもと少し雰囲気を変えたフラワーギフトを贈りたい方にもおすすめです。大切なお子さんの成長を祝い、これからの息災を祈念する行事である七五三。その香りに邪気祓いの力を持つという菊を、七五三のお祝いとして贈ってみてはいかがでしょう。
菊のなかには、丸く可愛らしい花を付けるポンポンマムや、可愛らしいスプレーマムなど、小さなお子さんが喜びそうな種類もあります。色やアレンジなどを工夫して、ぜひ可愛らしさと縁起の良さを兼ね備えたギフトにしてみてください。お正月の贈り物としても、菊はよく選ばれています。菊は邪気を払う力を持つとされる神聖な花で、新年を心地よく迎えるための縁起物としてふさわしいものです。また日本の国花であり皇室の家紋にも使われていることから、格式と気品を備えた贈り物にもなります。花びらを幾重にも重ねた花姿は非常に華やかで花持ちが良いため、お正月の飾りとしても贈り先の方のご自宅を美しく彩ってくれることでしょう。なお、菊は大変縁起の良いお花ですが、仏花としてのイメージも定着しています。プレゼントとして贈る際にこの点が気になる場合は、アレンジメントや花束のなかに異なる品種のお花を取り入れると良いでしょう。
ひまわりの花言葉は、「あなたを見つめる」「光輝」です。花びらの黄色と花芯のブラウンのコントラストが印象的で、夏の強い陽射しに立ち向かうように茎を伸ばす姿には、思わず目を奪われてしまうもの。凛々しい花の姿にぴったりの花言葉です。キク科の一年草ですが、学名・英名とも「太陽の花」という意味を持ち、ゴッホゴーギャン、モネをはじめとした多くの芸術家の心を魅了してきました。抜けるような青空と真夏の輝く太陽がよく似合う情熱的な花は、そのロマンティックな花言葉から、結婚のプロポーズの際に相手へ渡すお花としても人気を集めています。夏を代表する花であるひまわり(ヒマワリ)。4~6月頃に種をまくと1週間ほどで発芽し、7~9月に開花時期を迎えて、大きなものでは3mほどにまで成長します。
大ぶりな黄色の花を観賞用に、または種を食用とするために広く栽培されています。和名で「向日葵」と表記するほか、「日廻り草」「日輪草」「日車」「天竺葵」などとも呼ばれます。ひまわりの花は大きな花を1つ咲かせているイメージが強いですが、実は多くの花が集まって1つの花の形を形成しています。これは「頭状花序」と呼ばれ、キク科の植物に見られる特徴です。黄色い花びらの部分の花を「舌状花」、内側の色が濃く花びらがない部分の花を「筒状花」とも呼びます。ひまわりは学名を「Helianthus」と言い、これは太陽の花という意味です。英名では「sunflower」。これは、太陽の動きに応じて、ひまわり自身もその花の向きを変えると言われていることに由来しています。ひまわりが蕾をつけるまでの若く成長が盛んな時期、茎の上部は太陽と正面から向き合うように動き、朝には東を向いていたものが日没時には西を向いています。
蕾が大きくなると成長が止まり、茎は東側を向いたまま動かなくなります。さらに、茎の中に含まれる成長ホルモンは、日陰になっている茎の方が日向に生える茎よりも多く分泌されるため、日陰側の茎は日向の茎より早く背が高くなり、その上に被さりながら蕾をつけます。このため、ひまわり畑ではすべての花が太陽の方を向いているように見えるのです。ひまわりは、日本語で漢字にすると「向日葵」のほかに「日廻り」や「日回り」と表記されることもありますが、これは、こんなふうに太陽に向かって成長するひまわりの「向日性」を表した名前だったのです。ひまわりの種類は非常に多く、野生種だけで60種類も存在すると言われています。ひまわりと言えば人の背丈よりも高い花というイメージがありますが、近年では品種改良が進み、プランター栽培や切り花のアレンジメントに適した小ぶりのものが生まれて、より多くの形で楽しめるようになりました。
色も、明るく濃い黄色から薄いレモンイエロー、オレンジや山吹色に近いもの、ブラウンがかったグラデーションカラーまで豊富なバリエーション。また中心まで黄色1色の品種もあり、大人っぽいイメージでアレンジメントに使いやすくなっています。変わり種としては、チョコレート色やレンガ色、焦げ茶色に近い濃い赤、白などもあります。また一重咲き以外にも八重咲き品種があり、華やかな夏のイメージを彩るのにぴったり。贈る人のイメージや花束・アレンジメントの大きさに合わせて、お好みのひまわりを選んでみてください。ひまわりの花の中心にある茶~黒っぽい部分。こちらは1つ1つが「筒状花」という独立した花で、それぞれに雄しべと雌しべを持ち、ここに種ができます。
種は1個あたり1.5cm程度で、1輪あたり500~3,000個ほどの種をつけます。ひまわりが開花して1ヶ月半ほど経った、8月中旬~10月中旬頃が収穫時期です。栄養分を豊富に含んでいて、ハムスターや鳥のエサとしても有名ですが、食用としても人気があります。野球好きな方は、アメリカのメジャーリーグで、試合中ベンチにいる選手たちがおやつとしてひまわりの種を食べている姿を見たことがあるかもしれません。癖のない味で、ローストしたり塩味・チョコレートコーティングされたものなどが販売されています。ひまわりの種には、必須脂肪酸の1つであるリノール酸をはじめ、良質なタンパク質・葉酸・ビタミンEやB群・マグネシウム・カルシウム・カリウム・亜鉛などが豊富に含まれていています。ただし脂質やカロリーも多いため、食べすぎには注意が必要です。
ひまわりの原産地は北アメリカ大陸と言われています。紀元前から、ネイティブ・アメリカンの間で豊富な栄養を持つ大切な食物として育てられていました。コロンブスによってアメリカ大陸の存在がヨーロッパに伝わった後に、1510年にこの地を訪れたスペイン人医師が種を持ち帰り、マドリードの植物園で観賞用として育てられていました。その後、フランス・イギリス、ロシアとヨーロッパの各地に広まっていきますが、ロシアでは再び食用として価値を認められ、改良されてロシアを代表する作物の1つとなりました。日本には17世紀頃に伝わり、始めは観賞用とされていましたが、明治時代からは油の原料や飼料として重用されたと言われています。種はそれ自体が食用になるほか、種から採れた油は石けんや塗料の原料になります。また茎や葉は家畜の飼料として使用されることもあります。
日当たりと風通し、水はけのよい場所を選んで育てましょう。ひまわりはそれほど土質を選ばない丈夫な花ですが、栄養が足りなくなるとうまく育たなくなるので、しっかり肥料を施します。発芽に適切な温度は20~25度なので、種をまく場合は4月下旬以降にします。種から育てる場合、一般的な品種であれば15~20cm、背丈が高くなる種であれば50~60cmの間隔をあけて、深さ2cm程度の穴に種2~3粒をまきます。芽が出たら育ちのよい株を1本残して間引きます。ポットの場合は、葉が3枚前後になったころに植え替えしましょう。ひまわりは土の中の栄養が足りなくなるとうまく育ちません。そのため、鉢への植えつけ時に、元肥として「緩効性肥料」を使います。さらに花が咲くまでは、2週間おきに追肥を施します。ひまわりは乾燥した土地でも育ちやすい花ですが、開花するまでの間は、土の表面が乾燥しすぎないよう、朝晩2回の水やりが目安です。特に真夏は日中に水やりすると、土の中の水が熱せられて蒸発し根を痛めてしまうため、涼しい時間帯に行うことが大切です。